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第19話

俺は、はっはっと短く息を吐きながら天井を眺めるが霞んでいて見えているとは言えないがぼぉっと上を見ていた。 下半身からは空気を含んだ下品な音がしているが、疲労感で身体が動かないためどうなっているか確認することができない。 政行さんは今はキッチンへ飲み物を取りに行っていて居ないのでその間に何とか足を閉じようとするが足が痙攣していて言うことをきいてくれなかった。 「ははは。改めて見ると凄い格好だな」 息を整えることに集中していたら政行さんが帰ってきたのか俺を見て笑っている。 しかし、あがった息を整える事で精一杯なので言い返す事もできない。 政行さんは俺を見下ろしてまたスマホで写真を撮っている音がしている。 「母親のベットを中出しされた精液逆流させて汚す気分はどうだ?しかも下品なラクガキされたケツを叩かれながら気持ちよくなった姿を見て貰えば良かったんじゃないのか?」 「そん…こ…んっ!」 「母親の男を寝取っただけでも大したもんだよ」 息が整わないせいで言い返せないのを良いことに散々な言われようだが、そもそも義理とはいえ息子に手を出してきたのは政行さんのほうだ。 しかし、なんとか言い返そうと口を大きく開いたら舌に何かを乗せられた。 乗った物は舌の水分を奪っていき、舌先に苦味が広がる。 直ぐに政行さんにキスをされて口内に水が流れ込んできた。 水を反射的に飲み込むと、何度かキスで水を飲まさせられる。 「けほっけほっ」 「これから気長にホルモン治療していこうな。分岐はできてるし、あとはヒートがくるだけだからそれまでたくさん交尾ごっこしような?」 「ん…」 少し噎せたが息がだいぶ整ってきたので、話そうとしたのだが思いの外優しい手付きで頭を撫でられると疲労感で目蓋がどんどん重くなってきて睡魔に抗えなかった。 俺は少しの間眠っていたようだが、起きた時には身体が綺麗になっている筈もなくスマホを弄っていた政行さんと予告どおり一緒に風呂に入る事になった。 「これ…油性でしょ?どうしよう」 「ん?そのまま学校行けよ。変態な優希なら興奮するだろ?」 「そ、そんなことないし!」 髪を洗い終わってから風呂場の鏡に写る自分の姿に今更ながらに頭を抱える。 お湯で洗った位では全く薄くならないラクガキは、胸には乳首を囲むように模様が入っていて政行さんの話では女性器を意味するマークらしい。 軽く足を広げて内腿を見るとドMとか調教中とかの文字が書いてある。 後ろを振り返って姿を写すと尻には確かに中出し大歓迎って書いてあってその横には変態と書いてあった。 益々こんな文字を書かれたままで学校になんて行けない。 体育以外で服を脱ぐことはないが、トイレに行った時にもしも見られでもしたらと考えると頭が痛くなりそうだ。 「仕方ないなぁ」 政行さんは自分だけさっさと身体や頭を洗って湯船に浸かっていたので、やれやれと言いながら湯船からあがってくると鏡の横に置いてあった母さんのクレンジングオイルを俺の身体にぬりはじめた。 はじめは驚いたが、肌についた油性マジックがみるみるうちに溶けていき俺の全身はうっすらと黒くなる。 それをシャワーで一旦流され、改めて身体を石鹸のついたスポンジで洗われた。 「すごい!全部落ちた」 「油性ペンは油溶性だから水じゃなくて油に溶ける性質があるんだよ。これで平日に身体にラクガキしても安心だな」 「は?もうしないし!」 シャワーで泡が全て流れ落ちると、身体のラクガキ達は綺麗さっぱりなくなっていた。 俺は綺麗になったことで驚きと同時に感動を覚える。 くるりくるりと鏡の前で回ってみせると、政行さんは何でも無いように笑う。 からかわれて流石に言い返したが、今日みたいに下品な言葉を書かれる事を想像したら何故かドキドキと胸が高鳴りはじめる。 「ははは。そんなにあのプレイが気に入ったのか?本当にどうしようもない変態になったな」 「ち、違う!」 濡れた首筋にキスされ、一緒に湯船に浸かると俺の乳首を撫で始めた政行さんに俺が身体にラクガキをされて弄ばれる事を想像していた事が多分心音でバレてしまったみたいでまたしてもからかわれてしまう。 俺をバカにする様な発言とは裏腹に首にちゅっちゅっと優しくキスされているとまた眠くなってきてしまった。 「ドロドロだな」 「政行さんのせいだからね」 風呂からあがって俺達は汚れたベッドの片付けをはじめた。 シーツはぐしゃぐしゃだし、お互いの体液で所々変色してしまっている。 政行さんはシーツを剥がすとくるくると丸めてごみ袋に入れた。 新しいシーツをクローゼットの中から取り出すと俺に端を持たせて反対側に行った。 2人でベッドメイキングをすると早く終る。 政行さんに抱き寄せられ、政行さんのベッドで眠りについた。 翌日はファミレスでモーニングを食べてから再び内覧に数件回ってから夕方何食わぬ顔で2人で家に帰った。 「おかえりなさい。楽しかった?」 「う、うん」 家に帰ると、母さんが最初から家に居ましたという顔で夕飯を作っていた。 そして夕飯を3人で食べたが、特に変わったことも起きずに夜を迎える。 テレビの前のソファーで昨日もエッチしたのに、今日は母さんが居るからか政行さんは何もしてこない。 ただ、俺の横に座って耳元に顔を近付けてきた。 「今日のところで気に入ったところはあったか?」 「よく分かんない」 「やっぱり近場に別荘買うか」 今日の内覧について聞かれたが、俺的にはよく分からなかった。 今回も特に政行さんの琴線に触れる物件が無かったのか別荘の話になる。 俺は政行さんに買って貰ったぬいぐるみを抱きしめぼんやりとテレビを眺めた。 「あら?可愛いの持ってるわね」 「水族館に行った時にどうしてもっておねだりされてな」 「は?」 「優希にしては珍しいわね」 「ホテルでも一緒に“寝た”んだよな?」 「な、なに言って!」 「ふふふ。優希ったらまだまだ甘えん坊なのね」 「確かに優希は“甘えん坊”だな」 母さんがこちらに近付いてきて俺が抱いているラッコのぬいぐるみに視線をおとした。 政行さんは明らかに俺をからかってきているが、母さんは当然そんな思惑があるなんて気が付かず笑っている。 俺はなんとも複雑な気分だった。 政行さんとの関係がバレるとは思っては居ないが、母さんと話しているのを見ると連休の前まで何も思って居なかったのになんだかモヤモヤする。 「休みの間君もリフレッシュできた?」 「ええ!お陰さまでお友達と会ったり色々させてもらったわ」 「それは良かった」 政行さんが母さんに話を振ると、母さんはニコニコと笑いながら楽しかったと言った。 俺は政行さんに聞いて、母さんが浮気相手と会っていたと知っているのでこれまた複雑な気分になる。 とりあえずこの場から離れようと俺は部屋に帰ると言ってリビングを後にした。 「風呂に入れってさ」 「ノックくらいして欲しいんだけど?」 「何だよ。ちょっと話してただけなのに、母親に嫉妬してるのか?」 少ししてから政行さんが部屋に入ってきて、その事に言及して語気を強く言うと政行さんを喜ばせることになってしまった。 ニヤニヤと笑いながら俺を抱き寄せてちゅっと唇にキスをする。 そんな事で誤魔化されないと思うが、キスされて嬉しい。 政行さんは今週中に別荘を用意すると言ったのでまたすぐに2人きりになれるぞと言った。 あまり長い時間2人で居ると怪しまれるのでもう一度キスしてから政行さんは部屋から出ていった。 「暑い…」 政行さんは母さんから慰謝料を少額だけ貰って離婚をした。 浮気相手も政行さんが用意した人だからその人からは慰謝料を貰ったと書類上だけのやり取りをしたらしい。 母さんと政行さんが離婚をするまで実は1年半位かかってしまった。 まず、母さんと政行さんが婚姻関係にあったので俺と政行さんは結婚できない。 そこで俺は政行さんの秘書の人に新しい戸籍を用意してもらうのにまずは時間がかかった。 しかし、その間に政行さんは母さんに離婚しようとしている事を気付かせる事もなく別荘を買って俺と週末毎にそこで過ごすようになっていた。 別荘に通って俺の調教も進んでホルモン治療の影響もあって身体には変化が出ていて別荘では様々な調教を受けた。 裸で首輪をつけて散歩したり、身体にラクガキされたまま外でしたり家ではできない事を沢山してすっかり身体は政行さんに躾られてしまっている。 今日は何だか暑くて気休め程度に顔を手で仰ぐ。 「優希くんそろそろヒートくるんじゃないの?だって今日別に暑くないもんだるいとかある?」 「えー?確かにちょっとだるいかも…」 「本当にヒートが来るなら早く帰った方がいいんじゃない?フェロモンのせいで危ない目にあった先輩とかもいるらしいよ」 クラスメイトに言われて俺は半信半疑だったが、クラスで仲良くしている子達は俺の事はお構いなしにヒートについて話し始めて盛り上がっている。 俺はΩだけが通う学校に通っていた。 政行さんの薦めでもあるが、ホルモン治療の賜物で2次性が変化したのだ。 政行さんは診断結果に嬉しそうにしながら何か秘書さんにメールをしていたのを覚えている。 俺の2次性が変わってからすぐに政行さんは母さんと離婚して、学会で2次性の変化についての論文を発表した。 政行さんは一躍時の人になって今日も忙しく働いているので、こんな事で迎えにきてもらう訳にはいかない。 とりあえず保健室に行ってみたら、予想はしていたが熱があった。 ヒートではなく風邪症状かもしれないと言われたが、念のため抑制剤を飲むことをすすめられた。 Ωの通う学校では抑制剤や避妊具、首輪などが入学時に配布される。 急にヒート状態に入ると望まぬ妊娠や行きずりの相手に番にさせられてしまう事があるので自衛の為らしい。 しかし、政行さんには抑制剤は飲まない様に言われているので俺は午後の授業に出た。 「お前…来たな?」 「何が?」 何事もなく家に帰る事ができてソファーで寝ていると、政行さんが帰ってきて部屋の入り口でスンと鼻を啜った。 俺に近付くと俺は首根っこを掴まれて猫の様に寝室に連れていかれる。 首筋の匂いを嗅がれたと思ったら項に痛みが走って下半身からパシャパシャと水の音が聞こえた。 意味が分からないままで居ると気が付いた時には朝になっていた。 「だいぶ腹が目立つようになってきたな」 「赤ちゃんにはやく会いたいな」 「産まれたら次の子供孕ましてやるからな?」 「もう!政行さんのエッチ!」 「何がエッチだ!カマトトぶるなって。番を孕ませて子孫を増やすのはαの勤めだぞ」 俺のヒートが来た日に政行さんと番になれて、尚且つ望んでいた赤ちゃんもできて俺は嬉しくて堪らない。 学校は休学してしまって居るが、Ωが通う学校なので妊娠で休学する生徒は珍しくないと聞いた。 政行さんは子供が産まれたら、次の赤ちゃんが欲しいと言っているが俺も実は楽しみにしているのだ。 赤ちゃんに内側からお腹を蹴られて俺は嬉しさを噛み締めるのだった。 End

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