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第1話

卒業祝いをしよう。 そう言ったのは僕の方。 君はこの春に大学を卒業して、社会に出る。 二人で並んで歩いていると、その関係はいいとこ親戚のお兄さん。 下手したら親子と間違えられる僕たちは、ほとんどを他人に介入されない「巣の中」に籠って過ごしてきた。 けれど、卒業だからね。 祝いなんていらないと言い張っていたけれど、言いくるめた。 普段は使わないような郊外のリゾートホテルを手配しての、小旅行へ行こう。 きちんとしたテーラーで、僕の好みで、君のためにスーツを一式仕立てよう。 もちろん靴やネクタイも、かえのシャツも一式。 スーツはね、ここぞって時に着るといいよ。 靴は二足あるから、きちんと手入れをして交互に履きなね。 シャツは白だけではなくて、君の顔が映える色も入れておいたよ。 アイロンをかけられるなら家で洗ってもいいけど、出来れば腕がよくて安いクリーニング店を見つけておいた方がいいよ。 プレスされているシャツは気持ちがひきしまるし、きちんとした人に見えるから。 「ここまでしなくてもいいよ」 「何故? 新社会人になるんだよ? こういう時じゃないと、きちんと揃えないでしょう?」 「そうだけど……」 「僕が君に何かしたいと思うのは、迷惑?」 「そうじゃない。ないけど、なんかすごく、ガキっぽくてやだ」 「そうかな……」 「だって、あなたは俺の親じゃないし、俺はそれなりに自分で自分のことはできるよ」 全て僕が賄っての贅沢は、そう言って嫌がる君だけど。 理由があるときくらいは目一杯出資させてくれてもいいと思うんだ。 だって、卒業祝いじゃないか。

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