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「なんで二人は時々そうやってくっついてんの! おれというものがありながら、怜様、ヒドイよ!」 上履きの底を鳴らしながら歩んできた真琴が、怜に詰め寄っている。 由宇と怜の間には疚しい事などまったくないのに(危うい時期はあったが)、ヤキモチを焼いた真琴の追及は何だか恋人のそれだった。 一方の怜は目を細めて不機嫌を顕にしていて、由宇にしか見せない感情の起伏を真琴の前で見せている事に驚きを隠せない。 「余計な事言うと怒るよ」 「何でだよー! 怜様いっつも由宇、由宇、なんだもん! おれがいるのに!」 「真琴、あんまり騒ぐのもダメ」 (……ん、? 怜、真琴って呼んだ?) ヤキモチの火の粉が飛んでこないうちにと、由宇は二人から距離を取って会話を聞いていたが、さらに恋人同士のようなやり取りをしている。 怜が、つい先月までは「林田くん」や「君」と呼んでいた真琴をたった今名前呼びしていたのも気になった。 「騒ぐなって方がおかしいよー! 聞いてよ、由宇! おれと怜様、ちゃ~~~んとエッチしたのにいっつもこうやって……むぐっ!」 (ッッ!?!) 唇を尖らせた真琴が怒り心頭で由宇を見てきたが、今なんと言われたのか分からず目を白黒させた。 信じられない、と怜を見たものの、急いで真琴の口元を押さえた彼の表情に確信を得てしまう。 由宇はあまりに驚き過ぎて二、三歩後退り、声を裏返させた。 「え、えぇぇぇぇ!? な、何!? 何て言った!?」 「余計な事を言うな、真琴!」 「ちょっ、え!? し、したの、っ? 二人がっ?」 「……………………」 「したのーー!! 由宇には言うなって怜様が怒るから言えなかったんだ~…」 デレっと嬉しそうに笑う真琴と、聞かれたくなかったという風に知らん顔をする怜を交互に見やる。 二人の様子から、それは紛れもない事実なのだと悟ってしまい、由宇の心臓がバクバクした。 展開が早過ぎはしないか。 勢い余って真琴が告白したのも、怜がそれに対し即答で断っていたのも直に聞いていた由宇は、いつの間に体の関係まで進んでいたのかとドキドキである。 ただ、真琴の想いが成就した事に変わりはないのだろうから、いつまでも驚いている場合ではない。 「それは、その………おめでと、…?」 「由宇ならそう言ってくれると思ってた! ありがとう♡ 由宇が仲人してくれなかったら、怜様とお付き合いなんて夢のまた夢だったよ! ほんとに感謝してる! 由宇大好き!」 「付き合ってないし」 「えぇ!? 怜様、嘘はよくないよ!」 「嘘じゃない。 この間のは俺が悪かった。 真琴とは付き合えない」 「………え……う、う、」 男だとか言う前に、怜は根本的に真琴とは性格が合わないのだ。 いつかの放課後、元気で可愛い真琴の事を気になりはしていても、付き合う対象ではないと怜は真琴にハッキリそう言っていた。 由宇もその場に居たから、そんなにズバッと言ってやるなよ怜…と苦笑いした事を覚えている。 それでも尚、二人は由宇の知らないところでこっそり仲を深めていたのか、まさかやっちゃったとは思わなかった。 それなのにつれなさ過ぎる怜に、由宇も「それは言い過ぎだ」と止めようとしたのだが……いつかの如く真琴の顔がくしゃっと歪んだ。 由宇は耳を塞いで、慌てて怜を向く。 「怜! 真琴の事ギュってしてあげて! また泣き喚くよ!」 「うぅっ…!」 「……はぁ………」 下唇を出し、瞳をギュっと瞑って泣く準備に入った真琴を、怜が仕方なしに抱き締めた。 真琴を抱きながら、由宇に言われたからだよ、と瞳で訴えてきたがそんなものは知らない。 とりあえず怜からのハグで喚かれずに済んだから良かった。 「あのさ、二人はもうちょっと話し合うべきじゃない? 俺達多感な年頃だけど、セフレみたいなのはどうかと思う」 「セフレじゃないよ」 「セフレじゃない! 付き合ってる!」 「付き合ってないってば」 「うゔっ…!」 その言葉を怜が言う度に、真琴の顔が歪む。 真琴は怜の事が好きなのだから、体を重ねたのに「付き合わない」と言われれば泣くのも当然だ。 こればっかりは、怜がいけない。 付き合えないと断ったのなら、絶対に手は出してはいけなかった。 真琴は真っ直ぐ過ぎるくらい真っ直ぐなので、手を出してくれたという事はOKなんだと一発で勘違いするだろう。 「怜、真琴とやっちゃったんなら、ちゃんと責任取りなよ。 何で付き合わないって言っちゃうかな」 「だってこの子うるさいもん。 俺のタイプじゃない」 「じゃ、じゃあ怜様はおれの体が目当てなの…!」 「そういうわけじゃ…」 「ね、ほら…。 話し合うべき! 俺もう帰るから、二人で話し合ってどうにかしてよ。 まだ俺には未知の世界だから」 二人の事には親身になってやりたいけれど、何分この押し問答は由宇の理解と知識の上をいっているので、何も言えることがなかった。 由宇は言い合う二人を置いて教室を出た。 そしてふと、疑問が浮かぶ。 (そんな事より……男同士でエッチしたって、……どうやったんだろ…? 俺と先生がしたみたいなアレ…かな?)

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