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15一9※
傷のある左手をガードしているビニール袋が、もはやなんの役にも立っていない。
自由に動かせるわけでも、痛みが走らないわけでもないはずなのに、わざわざビニール越しに左手でシャワーを握り、それをお尻に押し当てられている。
浴槽の縁に手を付いて立つよう促された由宇は、バスチェアに腰掛けている橘から「洗浄」されているらしかった。
恥ずかしくてたまらない。
先程からいくらも時間を掛け、中指一本で気持ち慎重に中を行ったり来たりされている。
「せんせ…っ、おねが、っ…ぬ、抜いてよぉ……!」
秘部をまじまじと見られているのも嫌で腰をくねらせても、橘の指が入ってしまっているのでその動きは彼を喜ばせるだけだった。
「いい眺め」と笑う橘の気が知れない。
穴の中に注がれるお湯も気持ちが悪くて、綺麗にしようと蠢く指先をリアルに感じて何度となく鳥肌を立てた。
「探してっからもう少し我慢しろ」
「そ、そんなとこに、…先生の欲しがりそうなもんなんて、ないからぁっ」
「なぁ、痛くなくなってきた?」
「えっ…? あ………」
そういえば、いつの間にか痛みはそれほど無くなっている。
異物感が気持ち悪いと思うだけで、橘の指を咥えこんでいるそこはいつしか存在に慣れてき始めていた。
「どこなんだよ。 あれは」
「なに…? なに探してんの…? …っうぁぁっ…」
「お」
眉間に皺を刻んで恐ろしい顔を見せていた橘が、ニヤリとほくそ笑んだ。
新たにボディーソープで滑らせた指先が難なく侵入してきて、くにくにと中を蠢いたその時、背中が大きくしなるほど全身にピリピリッと衝撃が走った。
由宇の反応に笑みを濃くした橘は指を挿入したまま立ち上がり、シャワーを止めて華奢な背中に覆い被さる。
「ここか」
「んん、んーっっ! やぁっ…! やめ、そこ、やめ、て…!」
「ほんとにあるんだな」
「あっ…あ、……やだ、も…っ! やめて、って……言って…っ」
「んな気持ちいいのか。 あ、でもイくなよ」
指の腹がどこかを擦り上げる度に、由宇の体が震えた。
容赦ない刺激の連続で立っていられず、膝から崩れ落ちそうになったところを橘に抱えられる。
(なに、何だよこれ…! 頭の中が真っ白になるよ…!)
抵抗したくても、できない。
やめてと言いながら、己に触れて射精を促したくなってしまうほど気持ちがいい。
抜き差しされる指先の感触と内壁を擦る音、そして耳にふっと掛かる橘の吐息も、充分に興奮材料だった。
「あー……挿れてぇ…」
覆い被さった橘が吐息交じりに耳許でそう呟いた。
ただ由宇は、橘の独り言なんかに気を取られている余裕もなく、指先の感触をもっと感じたいとお尻を橘に突き出してしまう。
「んっ、んっ、んぁ…っ、あっ…」
「一回抜くわ。 我慢できねー」
「え、あっ? ちょっ…!?」
背中が震えるほどの快感をもたらしていた指先が、ずる、と引き抜かれて腰を支えられた。
橘の猛ったものがお尻の割れ目に触れて、驚いた由宇は振り返って首を振った。
(ま、まだそんなの入るわけないよ…! やっぱ先生は……鬼だ!!)
自分で「巨砲」と言うだけの事はある、ご立派過ぎる橘の性器の熱さを感じて由宇の顔は切なく歪んだ。
指一本とは比べものにならないそれが入ってくるなど、あり得ない。
入るはずがない。
右手だけで由宇の腰を支えている橘の腕を握り、「無理、無理」と呟き続けてみたが、優しくない橘はあっさりシカトした。
「腰上げて足閉じろ」
「む、むり…っ、むりだって…! そんなの、入るわけな…っっ」
「挿れねーよ。 擦るだけ」
「えっ? わわっ、……っ…」
熱過ぎるそれが太腿の付け根にぬぷっ、と差し込まれ、いつかの記憶が鮮明に蘇ってくる。
少しだけ腰を動かした橘にお尻をやんわりと揉まれた。
(うぅぅ…っっ、先生の、熱い……っ)
感触だけしか頼るものはないが、欲情して反り立つ橘の性器は控えめに見ても大きい。
直視していないので分からないけれど、男なら羨ましいと思うほどのサイズ感だ。
背中に感じていた体温が無くなり、橘は、膝が震えている由宇の太腿の付け根を擦り始めた。
……これが、セックスだと思っていた。
指先をあそこに挿れられ、シャワーヘッドを押し当てられるまでは、この行為こそが男同士のセックスだと信じていたのに、───違った。
まだこの先があるとは思いもよらず、由宇の心には不安しか無い。
橘の巨砲が由宇の窄まった小さな穴を出たり入ったりする想像なんてまるで出来なくて、先など知りたくないと思った。
「拡張はベッドでたっぷりしてやるから心配するな」
「し、心配なんて……、してない…!」
「もう終わり?って顔しただろ、さっき」
「なっっ!?」
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