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断じて、そんな顔はしていない。 ニヤッと笑い、由宇の細腰を改めて持ち直した橘が早くも自身の快感を追い始めている。 素早く打ち付けられる肌が派手な音を立てていて、行為の生々しさを物語っていた。 「んっ…んっ……っ、せ、んせ……っ!」 太腿を滑り、内側に差し込まれる度に、橘の巨砲と由宇の小ぶりな性器がいやらしく擦れ合う。 鬼頭が触れ合う毎に全身が甘い痺れに包まれるため、これこそがセックスによる快感か、と納得していたあの頃の自分は何とも幼稚だった。 期待していたのに、橘は由宇のものに触れてくれない。 何十分も保たせる気はないのか、橘は性急に由宇の太腿を擦り上げていて、ようやく切羽詰まった「一回抜くわ」の意味を知る。 「お前の口に出すからな」 橘の不埒な囁きに、由宇の動きが止まる。 「……んぁ…っ、あっ、な、なに…っ?」 どういう意味か分からずパチパチと大きな瞳を瞬かせていると、くびれに沿って腰を撫で回された。 長い指先が由宇の背骨をツー…と辿り、それだけでもゾクゾクして背中がしなる。 肩を持たれて素早く擦られてしまい、性器同士がぶつかる強さも、回数も、多くなっていた。 気持ちいい。 ぬるぬるしていて、温かくて、程よく固くて弾力があって、何よりこの、由宇を求めてくれている橘らしからぬ必死さに胸が熱くなる。 擦られる度、体が揺れ動く度、キュン…、とする。 だから、橘がいくら想像の範疇を超えるような事を言っても、嫌いになんてならない。 ならないけれど、動揺はした。 「…え、え、待って、それは…っどういう…っ!」 「飲まなくていいから口ん中に出させろ」 (えぇぇぇっっっ……!?) そんな事出来ない、と由宇が橘を振り返ったが最後、後頭部を支えられ、反論しようと薄っすら開いた口元に橘の巨砲が押し当てられた。 「んむっっ!」 無理やり含まされた大きな存在は、とても由宇の中にすべては収まりきらない。 口を目一杯開いて先っぽだけを受け入れた。 橘が自身を扱いて射精を促すと、───ドロ、ドロ、と熱い液体が数回に渡って由宇の口腔内を犯した。 「………っっ………!」 「飲んでもいいけど」 まともに見た事もない精液というものを、まじまじと見る前に味わう羽目になってしまった。 風呂桶で浴槽からお湯を取り、急いで橘からの欲を吐き出して口をゆすぐ。 「………っ、っ…の、飲まない、飲めないよっ」 「残念」 「ぅぅ………まずい……っ」 (精液ってこんな味なの…一生知らなくていい事知っちゃったよ…!) 吐き出してゆすいでも、まだ変な後味が口の中に残っている。 何とも言いがたい後味と、鼻から抜ける生々しい香りは容易く消えてはくれないだろう。 しかもあれを飲んでもいいと言われたが、断固拒否だ。 「小せぇな、お前の口」 「………え?」 「これ俺の入んのかって確認した事あったろ。 やっぱ初っ端から全部は無理そうだ」 「か、確認した事あった……?」 「喉まで咥えられるよーになれよ、俺の恋人なら」 「………………!」 ───何だかすごい事を言われている気がする。 宣言通り一回抜いてスッキリした橘が、呆然とバスチェアに腰掛けている由宇の髪を、右手だけで器用に洗ってくれた。 触れてくれなかった由宇の性器はというと、突然の口腔内発射に驚いてしょんぼりと萎えてしまっている。 擦られて、揺すられて、気持ちいい…、と思っていた間だけは快感の中に漂っていられたのに。 いきなり橘の体内に眠る魔王様が現れて怖かった。 ……不味かった。 「お前の声はダメだ」 体を抱えられて、浴槽にちゃぷんと入る。 背後から抱き寄せた由宇の肩口を吸いながら、橘が柔らかな口調でそう呟いた。 「え、………」 「抑え効かなくなんの。 嫌って言われんのがどうしようもねー。 もっと言えって思っちまう」 「…先生……前も似たようなこと言ってたよ…」 「フッ…。 俺こんな趣味ねーのに」 「ないならやめてよっ。 俺初心者中の初心者なんだから!」 橘の新たな性癖が開花した事など知らなくていい。 それを由宇に押し付けてくるのは横暴過ぎると思うのだが、素知らぬ顔の橘は前髪をかき上げて無駄に整ったその面を由宇に近付ける。 「そう言われてもな。 まだベッドであんあん言わせてねーし」 「い、言わない! そんなの言わない! てかここでもう、し、したんだから、ベッドはナシだろ!」 「何言ってんの? ベッドでのメインはここの拡張だろーが。 今のはお前のあんあんで俺の巨砲が我慢出来なくなって発射しただけ」 「ぅわっっ、も、もう! いきなり触るなよ!」 「恥ずかしいレベルが20にアップしたな。 お前去年より色気増したぞ。 やったな」 「なんの話だよ……!」 ツッコミながら背後の橘を振り返れば、フッと笑ういつもの悪魔の微笑があった。 由宇は視線が合うなりすぐに前を向き、鼻スレスレまでお湯に沈む。 ブクブク…と息を吐いてお湯の膨らみをいくつも生み出すと、顔の火照りを誤魔化せた気がした。 (先生、こんなにかっこよかったっけ……)

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