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僕達の関係-2
「……ねぇ、あの三人ってなんか変じゃない?」
同じクラスの女子が一人、ヒソヒソ声で指を差す。顔を突き合わせた女子二人が、その先にいる僕達に視線を向けた。
「………」
そう……僕達は気持ちが悪い程いつも一緒にいる。
三人一緒……誰かが欠けてはいけないのだ。
もしそうなったとしたら、その瞬間……全てが壊れ、何もかもが砕け散って、消えて無くなってしまう……
……まるで冬の薄氷のように、脆く儚い関係……
……どうしてこうなってしまったんだろう
中学生の時、僕は杉浦ナツオに出会った。
同じクラスだったのに、会話どころか目も合った事なんて無かったと思う。僕とはかけ離れた存在で、クラスの中心にいる人達とよく連んでいた。
それから高校に上がって……
ナツオの方から声を掛けてきてくれた。合わせる視線。僕に向けた笑顔。
初めての事で驚いたけど、このクラスに同じ出身校の生徒が僕しかいなかったから……なのかもしれない……
だけど、それがきっかけで何となく一緒にいる様になった。
そんな僕達の前に突然現れたのは……ナツオの幼馴染みだという、佐倉舞。
舞は転校生だ。
「昨日の歌番観た?」
「あー、みたみた!」
舞がナツオに身を乗り出して話しかければ、舞を映し出す鏡のようにナツオも身を乗り出す。楽しそうな、笑顔。
「………」
いくら合わせた机が二人の間にあるからって……寄りすぎな気がする……
モヤモヤとした気持ちが、胸の中で渦巻いていく。
二人は向かい合って座り、既にお弁当を広げていた。僕は顔を伏せ、ガタガタと床を引きずり二人の斜向かいに机を付ける。
この瞬間いつも思う。僕がここに混じっていいのかな、って……
「″ラクマン″やっぱスゲーよなっ!録画しといて良かったぜ!」
「えっ、したの?いいなー。うち親がさぁ、裏番の方録っちゃって……」
「じゃあダビングしてやるよ」
「え、マジで?!……やった!ナツオ大好き!」
二人はいつも、顔を合わせればすぐに会話が弾む。割り込む隙もないくらい。軽快な音を立てラリーの続く、卓球のようだ。
「………」
舞がいなかった頃は、全然こんな雰囲気じゃなかった。
もっと静かで、会話も殆ど無くて……
だけど、ナツオの傍は居心地が良くて……僕の大切な居場所だった。
舞が来てからだ。こんな風に空気が変わってしまったのは。
笑顔が増え、会話も増え……いつも楽しそうで……
ナツオの整った横顔。
舞に向ける、僕の知らない表情……
「………さくらは?」
「えっ、」
ナツオが此方に視線を寄越す。
その突然の振りに、僕はドキッとする。
「……あ、う、うん」
そう答えて舞を見る。
舞は少し驚いたような、でも満面の笑みを僕に向けた。
「えっ!さくらくんも″ラクマン″好きなの?!」
「まぁな。俺が無理矢理、染めたから」
「へぇー?……ナツオ、結構やるじゃん!」
僕へ振った舞の質問を、ナツオは簡単に掻っ攫う。
そして二人はまた、お互い笑顔を向け、隙の無いピンポンラリーを始める。
少し会話に混ぜてやった……そんな感じなんだろう。それでも、そんなのでも、僕は嬉しかった。
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