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放課後デート-1
教室内では散々くっついている僕達三人も、放課後になれば何事もなかったかのようにそれぞれ背を向ける。
ナツオは他の男友達のグループと。舞は女友達グループと。
キャハハ……
女子数人が、はしゃぎながら僕を追い越す。先に下駄箱に辿り着いた彼女達は、この後寄り道するお店の話で盛り上がっていた。
「………」
僕は、いつも一人。
彼女達が去った後の静けさの中、脱いだ上靴を下駄箱に仕舞う。
二人の様に、僕には他に友達がいない。別に、いい。ナツオがいるなら、それで……
紐靴に踵を押し込めていると、背後から僕を呼び止める声がした。
「……待って、さくらくんっ!」
振り返って見れば、それは息を切らせ走ってくる舞であった。
「ねぇ、一緒に帰ろっ」
「……え」
正直、驚いた。
学校以外では連まない……三人の間にできた暗黙のルールが、簡単に破られる。
それもある。だけど、それだけじゃなくて。
……舞にとって僕は、邪魔者以外の何者でもない。そう思ってたから……
「……ダメかな?」
舞の瞳が変わる。何となく、寂しい色。……気のせい……じゃなければ、だけど……
舞が、僕の傍らにいる。
なんだか、変な感じ……
舞がいるのにナツオがいないから、なのかもしれない……
……でも
もし舞の隣にいるのが、僕じゃなくてナツオだったら………変じゃない気がする……
「……あれ、舞じゃん」
玄関を出てすぐ脇にある、自転車置き場の前に屯していた数人の女子が、こちらに顔を向けた。
「舞も一緒にカラオケ行こうよ」
「あー、ゴメン!今日はパス!」
笑顔のまま、両手を顔の前で合わせる。
そして舞は一度も立ち止まる事なく、そのグループの前を通り過ぎる。
「……いいの?」
「うん。一緒にいてもつまんないし」
「……え」
そう言い切ってしまう舞に、驚きを隠せない。
どうして?
……僕といる方が、よっぽどつまんないんじゃないの……?
「……それで、びびったナツオが、いきなり私にしがみついてきやがって……」
僕の知らない、舞とナツオの思い出。臨海学校の夜、電気を消した暗い部屋の中で行われた怪談話のエピソード。
二人は小学生の頃、同じクラスで仲が良かった。だから時々、その時代の話で二人は盛り上がる。
そうなるともう、ついていけない……
入り込めない空気が、僕を拒絶する。僕だけが取り残される。……別世界。
それでも僕は、上の空で聞く。聞きたくない。けど、聞きたい。
……僕の知らない、ナツオ。
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