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1-1 ひとつ屋根の下

本当に、 恋愛なんかにかまけてる場合ではないのだ。 社会も都会も生きていくには大変で 理不尽も不条理も山のように点在し、ちょっと歩くだけですぐ足がぶつかる。 “ふわふわしている”と昔からよく言われるが 人よりも少々、厄介な性質を持っているらしいから 足をぶつける回数が多いだけ。 そんな風にいつの間にか諦めるのが得意になって 分厚い人生のルールブックに書き足すことが増えていく。 例えば、 性欲を恋愛と履き違えない。 だとか セックスはネタとして昇華すべし。 だとか そもそも、 身体から始まった関係に本気になってはいけない。 だとか とにもかくにもややこしいルールの数々は 自分が傷付かないための予防線ばかりで それを破ってしまったのなら、 それはまぁ苦しいのは当然のことで。 隣で寝息を立てるその男の姿を観察しながら ナナメはため息を零した。 形のいい眉毛、サラサラと流れる黒髪、 薄い唇、一見細いように見えるけど実は筋肉質なその体。 「何でこんなに可愛いんでしょうかねこの人は…」 彼とは何故か一つ屋根の下で暮らし、何故か同じベッドで寝る毎日。 それでも2人の関係はなにか?と言われれば、 とても仲のいい友達でも恋人関係でも決してなく。 本当に自分がどうかしていただけなのだ。 「……ヨコさん」 ナナメは彼の唇をそっと人差し指で突いた。 本当に、 恋愛なんかに脳を使ってる場合じゃないのに。 この人のことを本気で、 好きになってしまった俺が悪いのです。

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