236 / 236
4-75 なんでも。
「……ん?なんて?」
タコのミイラに夢中になっていたらしいヨコは、ハッとしたようにこちらへと顔を向けた。
ナナメはにこにこしながらも彼に抱き付いた。
「ごめん…聞いてなかった…」
「なんでもないですよーだ」
ヨコは不思議そうに見つめてくるけど、好きにさせてくれている。
「ヨコさんを好きになってよかった」
好きになんてなってはいけないって思ってたけど
やっぱり、そうして良かったと今はすごく思えている。
それはまるで、奇跡みたいに。
「俺の台詞なんですけど?」
「ふふ。そういえばヨコさん…なんでもするって言ってくれましたよね?」
「んー?まぁ…そうだな」
ヨコは抱きしめ返すように腕を回して、額をくっつけるように顔を近付けてくれる。
ナナメは彼の頬を撫でながら、微笑みを浮かべた。
「俺ね…ちゅーしてほしいです」
小声で呟くとヨコは変な顔をして、ちゅ、と軽く口付けてくれた。
「これでいい?」
「んー…まだ足りないかもぉ…」
くすくす笑いながら、彼にキスを強請った。
優しく頭を撫でるように、口を塞がれて、ナナメはぎゅうっと彼を抱きしめた。
ここに居られて、よかった。
彼の腕の中が、まるで自分の居場所みたいに思えた。
だってそこに、いつまでも居座ってしまうものだから。
Next…
ともだちにシェアしよう!

