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4-74 なんでも。

「ナナメの家族にちょっとでも良いと思ってもらえてるなら何よりです。 寧ろ…すごい怒られるかもってちょっと構えてたし…」 「はぁ…そう言われると俺もヨコさんのご両親に怒られるかもしれませんよね…」 家に連れ込んでしまっているので自分の方が悪いんじゃないかと思い始めてしまう。 自分は、姉のおかげで後継も孫の心配もされずに済んでいるが 彼は一人っ子のようだし。 「…ちゃんとヨコさんの親御さんにもご挨拶しないとですね」 ナナメは結局お気持ちしか書かれていなかった小冊子くらい量があるラブレターを封筒にしまいながら、彼を見つめた。 ヨコは干されたタコが丸々一匹入っている袋を持ち上げながら、あー、と首を傾けている。 「…うちの親も、多分気にしないとは思うけど… そもそもいつ会えるか分からないし…」 「そっか。お忙しいんでしたよね…」 彼の両親は昔から忙しくしていたらしい。 ナナメは、その所為でヨコは年齢の割にしっかりしていて自立しているのかもしれないと思ってしまう。 「今オーストラリアにいるしなぁ… まあ帰ってくる時は流石に連絡くらいはくれるとは思うけど」 「あれ…?前はカナダでは…?」 「下手したら帰って来ない可能性もあるなぁ…」 ワールドワイドなご両親の動向は謎だったけど、彼は彼なりに苦労して来たのだろう。 あの島で自分は一人のような気がしていたけど、本当は誰だって戦っていたに違いない。 あの時彼はどこでどうしていたんだろう。 だけど彼が言うように、自分がもしも東京へ逃げて来ていなかったらきっと今こんな風にはしていない事は確実だ。 自分の人生は失敗だらけだと思っていた。 褒められた試しもなくて、不毛で、不幸で。 だけどその道が彼に繋がっていたのだとしたら、幾らかは上等だと思えるかもしれない。 「…すごいな、ヨコさんは。 俺の過去も全部救ってくれるんだもん」 ナナメは少しだけ瞳を濡らしながらも、彼と出会えてよかったと深く感じてしまった。 何度も何度もそう思えているけど、 きっとこれからも何度もそう思わされるに違いない。

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