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第6話
ただただ温かい咲夜先輩の手が、僕の流れ出る涙を救い撮ってくれる。それだけで嬉しかった。
「生徒会のお手伝いをしないかい? それで君の身の回りでかかるお金は私が負担してあげるよ。幸い、私は株をやっているから、自分のお金で君を養える。嫌かい?」
「でもそんな……! 咲夜先輩は赤の他人で得することなんて一つもないのに……」
「これも何かの思(おぼ)し召しかもしれない。弟を死なせてしまった私に償うチャンスをくれたのかもしれない。だから、私を頼って?」
紳士な目で言われて、僕は頷きそうになったけれど、されるだけじゃ僕はいつまで経ってもお返しできるかわからない。
それに兄さんの事愛してたから、このままだと、僕は求めてしまいそうだった。
口を噤んでいると、咲夜先輩は僕の名前を呼ぶ。
「静留君……体が疼くとかそういう事なのかな? 君はチョーカーを巻いているからΩだものね。発情期が怖いのかい?」
「僕は兄さんを愛していました。でも、先輩から愛がもらえるとは思えない。抱いて欲しいなんて思っちゃいけないんだって思ったら、涙が出て……」
驚いた顔をしている咲夜先輩。
それもそうだ、男の僕なんかがそんなこと言ったらまた、はしたないって思われてしまう。
きっと今の視線は厳しいものだろうと予想し、目を『ッギュ』と瞑り大粒の涙を堪えた。
すると体を包み込む優しい感触に、僕は目を見開いた。咲夜先輩が僕を抱きしめている。
「私はどうしたらいいか、どう答えたらいいかわからなかったけれど……なんだか抱きしめたくなった。愛なのかはわからないけど、君が放ってはおけない」
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