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第5話
「何をしている? 君は何故抱かれる気がないと言った?」
「僕だって抱かれるのは嫌ですよ。でも生活が、この学園似通うにはお金が必要だ。だから……」
本心を口にしてしまったことを後悔する、先輩は近づいてくるとゆっくりと僕を抱き締めてくれた。
「泣かせてしまったね。すまない。君は家族いないのかい?」
「いません……」
「誰か引き取ってくれる人は?」
僕はかぶりを横に振った。静かに。
ここから離れたくないのも相まって涙目になっている僕。でも先輩が穢れているって思うようなら、そういう客引きはやめないと本当に嫌われてしまう。
「頼みっていうのはなんだい?」
「この学園をやめたくないです。だから、この学園を外で、バイトさせてもらえないか頼んでいただけませんか?」
僕の思わぬ提案に目をぱちぱちさせる生徒会長。そして口を開いてこう説明された。
「この学校は由緒ある学校だから、絶対にアルバイトは認められないんだ。過去に遡っても一人も居ない。先輩に聞いた話しだと、過去にもバイトをしたいと言った生徒が居たそうだけど、例外は認められなかったそうなんだ」
「そんな……僕、やっとやっとお兄ちゃんに会えたのに……」
思わず思ったことを吐露していた僕。
小さい頃に交わした約束を思い出した。お兄ちゃんは大きくなったら僕をお嫁さんにしてくれるって。言ったのに。事故で死んじゃうなんて……。
意気消沈して言葉も発せなくなった僕はいつの間にか咲夜先輩の胸の中に居た。
「提案がある。君が嫌じゃなかったらだけど。もう、他の誰にも抱かれないね?」
「咲夜先輩に嫌われたくないので」
僕は涙をポロポロと流しながら言う。出会わなければ良かったのに……。そしたらこんな学校やめて働くのに……。
「私にも記憶が曖昧だけれど、君にそっくりな弟が居たんだ。名前は忘れてしまった。とてもかわいい子でね。だから君に似ていて嬉しいのは確かなんだ。ひどい事を言ったかもしれない。君にそんな事情があったなんて知らなかったとはいえすまない」
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