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第4話

 気分は最悪だった。  折角お兄ちゃんに似た人を見つけたのに。  今日は誰にも抱かれる気になれないから、今日の予約はキャンセルさせてもらった。 「この先も全部キャンセルできればいいのに……」 「どうしたんだ? 静留?」 「いや、なんでもないよ。御園生(みそのお)くん」  訝しげな目で見てくる彼もまた、僕の顧客。  あんな事してるから噂は広がるよね。  はぁ……。 「俺静留と同じ部屋がいい」 「上級生と同じ部屋になるんじゃないの?」 「上級生に頼み込んで代わってもらう!」  思いつきで言う彼は御曹司、御園生財閥の息子。御園生令(れい)。  気分はすごく悪いのに、こんな馬鹿なやつの相手をしなくちゃならないなんて。  早く部屋決まればいいのに。  まだ、望みはあるのかな……咲夜先輩には嫌われたくない。 「張り出された。見に行こう?」  手を伸ばされて僕は手を取らずにスタスタといってしまった。  どんな顔をしているだろう。そんな事も考えられずに僕は頭の中で兄さんの事を思い描いていた。 「嘘……せん、ぱいだ……」  張り紙には、伊波咲夜と書いてあった。  胸が苦しくて、僕は必死に顔には出さないように、広場から去った。 「まさか君が私と一緒の部屋だとは……」 「あの、先輩。お願いがあるんです」 「君の顔は見たくないと言ったはずだ」 「違うんです。本当にお願いが……」  切実なお願いだった。僕にとっては。好きになってもらいたいけど。それが無理なら…‥。  コンコン。 「はい、幹屋先輩でしたか。私ん異様ですか? あ、彼に?」 「急にキャンセルだなんて困るよ。君も困るだろう? お金が入らないと。学校に居れないんだからほら、お金持ってきたか――」 「幹屋先輩、私の前でそのような行為に及ぶのはやめていただきたいのですが。処罰されたいですか?」  嫌悪の声でピシャリと言い放つ先輩。幹屋先輩はしつこいから嫌なんだけど、お金たくさんくれるから…‥でもそんな気分じゃないよ。 「僕はもう誰にも抱かれる気はないので、ご引取願えますか?」 「そんな事言わないで、気が変わる様に頑張るから、また来るから明日の放課後いいね」  僕は顔を伏せ荷物を持って、出ていこうとすると、

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