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第3話

「ほら相模(さがら)くんは頭のいい子だろう? 手荒な真似はしたくないのでね。今後一切この子に手を出さない様に」 「うるさい! 喧嘩なんて出来ないくせに。怪我させる――」 「飛燕(ひえん)、後は任せたよ」 「承知しました」  何処からあらわれたの!? あの人……。まるで忍者みたい。 「行こうか。生徒会室に言って事情を聞くよ」 「あ、いえ、僕は……大丈夫です」 「君の事知りたいしね。おいで」  手を差し伸べられたので思わず握ってしまった僕。だめだこの人には叶わない。 「君はなんて名前なの?」 「柊(ひいらぎ)静留です。あの、先輩は……先輩はなんていう名前なんですか?」 「私かい? 参ったな。名前もしられてなかったなんて」  少しはにかんだ笑顔を見せる先輩に胸の鼓動が速くなる。もっと違う表情がみたい。名前だって知りたい。 「伊波咲夜(いなみさくや)っていうよ。よろしくね。新一年生君。君のこと少し知っているよ」  名前までお兄ちゃんと一緒だなんて。神様が引き合わせてくれたのかな? 「え!? 何故ですか?? そうだ、 咲夜お兄ちゃんじゃなかった……咲夜先輩は彼女とか居るんですか?」 「婚約者ならいるけれども、どうでもいい女の子でね。破談にしようとは思っているけれども、お兄ちゃんねぇ……」  僕は心底嬉しかった。だって兄さんに似たこの先輩は好感がもてる。  いつか僕を抱いてくれないかなって思っていると……。 「君はお金が欲しいのかい?」 「僕は、確かにお金は必要ですけど、……先輩が気になります」  少し考えている先輩。もしかして処罰されてしまうのかな僕。  浅はかなことだったかもしれないけど、生活していく上では体を売る以外、手立ては無い。 「君に気に入られてもちっとも嬉しくないけれども。だって君は誰にでもするんだろう? 私もそのうちの一人に加えたい。そうなんだろう?」 「違います。先輩は、咲夜先輩は特別なんです」 「誰にでもいう口は信じられないものでね」  だめだ、先輩は僕が稼いでたこと知ってる。どうあがいても僕が悪い。  こんな、こんなにも魅了されてやまないのに……。 「そういえば、今日から、一年生は一部の上級生と同じ部屋になるはずだ。行った方がいい部屋が変わる事があるだろう。変わらなくても、その顔を私に二度とみせないように」  僕は愕然とした。これは完璧な拒絶。  生活の為に仕方なくしていたことが……普通に働くことが出来ないこの学園の仕組みだから仕方ないのに……。 「さぁ、早く行くといい」

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