3 / 6
第3話
「ほら相模(さがら)くんは頭のいい子だろう? 手荒な真似はしたくないのでね。今後一切この子に手を出さない様に」
「うるさい! 喧嘩なんて出来ないくせに。怪我させる――」
「飛燕(ひえん)、後は任せたよ」
「承知しました」
何処からあらわれたの!? あの人……。まるで忍者みたい。
「行こうか。生徒会室に言って事情を聞くよ」
「あ、いえ、僕は……大丈夫です」
「君の事知りたいしね。おいで」
手を差し伸べられたので思わず握ってしまった僕。だめだこの人には叶わない。
「君はなんて名前なの?」
「柊(ひいらぎ)静留です。あの、先輩は……先輩はなんていう名前なんですか?」
「私かい? 参ったな。名前もしられてなかったなんて」
少しはにかんだ笑顔を見せる先輩に胸の鼓動が速くなる。もっと違う表情がみたい。名前だって知りたい。
「伊波咲夜(いなみさくや)っていうよ。よろしくね。新一年生君。君のこと少し知っているよ」
名前までお兄ちゃんと一緒だなんて。神様が引き合わせてくれたのかな?
「え!? 何故ですか?? そうだ、 咲夜お兄ちゃんじゃなかった……咲夜先輩は彼女とか居るんですか?」
「婚約者ならいるけれども、どうでもいい女の子でね。破談にしようとは思っているけれども、お兄ちゃんねぇ……」
僕は心底嬉しかった。だって兄さんに似たこの先輩は好感がもてる。
いつか僕を抱いてくれないかなって思っていると……。
「君はお金が欲しいのかい?」
「僕は、確かにお金は必要ですけど、……先輩が気になります」
少し考えている先輩。もしかして処罰されてしまうのかな僕。
浅はかなことだったかもしれないけど、生活していく上では体を売る以外、手立ては無い。
「君に気に入られてもちっとも嬉しくないけれども。だって君は誰にでもするんだろう? 私もそのうちの一人に加えたい。そうなんだろう?」
「違います。先輩は、咲夜先輩は特別なんです」
「誰にでもいう口は信じられないものでね」
だめだ、先輩は僕が稼いでたこと知ってる。どうあがいても僕が悪い。
こんな、こんなにも魅了されてやまないのに……。
「そういえば、今日から、一年生は一部の上級生と同じ部屋になるはずだ。行った方がいい部屋が変わる事があるだろう。変わらなくても、その顔を私に二度とみせないように」
僕は愕然とした。これは完璧な拒絶。
生活の為に仕方なくしていたことが……普通に働くことが出来ないこの学園の仕組みだから仕方ないのに……。
「さぁ、早く行くといい」
ともだちにシェアしよう!