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第55話 好きな人と。

そしてアッシュは 未だかつてないレベルにテンパっていた。 結局ベッドの上でファリスと向かい合っているのだが、何をどうして良いのか分からず 正座したままそわそわしてしまう。 一方ファリスは余裕そうに ジャケットを脱ぎ捨て髪を解いていた。 「ファ...ファリスさん...そのですね... 俺はDTフィールド張って20云年でして..、 王子の嗜み『お前はただ喘いでいればいい...』 みたいなの出来る気がしないしさっきまで まずは交換日記からとか思ってたんですが...」 どうせすぐバレるしはっきり言ってしまおうと カミングアウトするとファリスは、はぁとため息をついた。 「交換日記って....まあ、わかってるよ。 ..それよか私男だけど、本当に大丈夫かしら?」 ファリスはそう言いつつも片手で シャツのボタンを外していく。 白い肌が露わになっていき、 アッシュは目のやり場に困って思わず天井を仰いだ。 「...っ、大丈夫、というか寧ろ...っ」 女すら抱いたことはないが、 恐らく彼の方が美しい可能性大である。 どうにか身体の熱を落ち着かせようとするが、 ファリスは容赦なく近寄ってきてアッシュの体に触れてくる。 アッシュはびくりと身体を強張らせた。 「ひょお!?」 素っ頓狂な声をあげながら後ろに倒れそうになるとファリスは愉快そうに口を歪めた。 「ビビりすぎだろー ..ま、安心しろって。リラックスリラックス」 ファリスはそう言って慣れた手つきでアッシュの服に触れてくる。 リラックスと言われても無理だった。 アッシュは歯を食いしばってしまいながらも、 近過ぎる距離感と間近で感じる彼の香りに耐えていた。 「嫌だったらすぐ言え?」 耳元でファリスは囁き、アッシュは思わず彼を見た。 が、不意に唇を塞がれる。 「...っ!?」 目を見開き、 彼の肌が見え、すぐにまたぎゅっと目を閉じる。 唇が離れた。 「なんで歯食いしばってんだよ。口開けろ」 言われるが、そんな余裕はなかった。 また再び唇を塞がれる。 柔らかな唇の感触に心臓が飛び出しそうだった。 やがて彼の舌に唇を撫でられ、逃げそうに身体が引ける。 すると膝の上に乗られ、するりと頬と頭に彼の手が触れてくる。 「...あけて」 僅かに離れた隙間から呟かれる。 声の振動が唇に当たってアッシュは思わず歯に込めた力を緩めた。 その隙に彼の舌が口腔に侵入してきた。 「..っ、ん...ッ」 ぬるりとした舌が口の中を這い、 ぞくりと顎が震える。

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