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第107話 退屈しのぎ
退屈。
カイザーも、国も強くなりすぎた。
何よりも強いことは退屈で、
永遠に癒えない渇きを抱えているのと同じなのだ。
故にこの国は、常に退屈さを癒すために戦争を繰り返してきた。
領土を広げ武器を増やし、その果てに待つものなどなにもないとわかっていても。
カイザーは静かに彼女に歩み寄った。
近くで見る彼女はまだ幼く、子どもであった。
しかしその金色の瞳を炎のように光らせこちらをじっと見上げてくる。
今まで出会ったのことのない、得体の知れない何かを感じた。
「カイザー様、
わたくしはどんな国より広く深く広大で
どんな武器より鋭く強く、
そして繊細で儚く美しいものを知っている。
あなたにそれが手に入れることができるかしら..
今のあなたでは無理かもしれないわ」
挑戦的にミミィグレースはそう言って愉快そうに笑った。
しかしよく見ると指先が震えている。
カイザーは鎧の下で笑みを浮かべ彼女の顎を掴んだ。
「もう一度名をお聞かせ願おうか」
「ミミィグレース・オウカ・リゼエッタ・トロイト」
この細い身体を引き裂くのは簡単だ。
"だがそれでは面白くない"。
今までもそうやって、数々の国を侵略してきた。
この稚拙なゲームがまるでそれと同じだというように高揚しているようだった。
「......よかろう。
貴殿を、その自慢げな平らな土地を満たせばいいのだな?」
彼女から手を離し、発した言葉にあたりはどよめいた。
ミミィグレースも驚いたようだったが、
やがてムッとしたように口を尖らせる。
「平らって.....失礼な!好感度が下がりましたわよ」
怒ったような反応をされ、何故だかカイザーは愉快な気分になってしまうのだった。
「本気ですかカイザー様!?」
「なにも小娘の口車に乗ることはありません!」
「黙れ!我は"彼女らの戦い方"に則るだけだ」
「....戦い、ではないですのに」
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