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第109話 恋する王子たち

一足早く真実の愛とやらに離脱していた2人の王子は、リゼエッタへと戻ってきていた。 荒れ果てた城や混乱した街や村を纏め、徐々にリゼエッタ帝国は元の美しい国へと戻りつつあった。 「はー一時はどうなることかと思ったけどなんとか落ち着いたなー。疲れた疲れた」 手入れがされず草が生え放題になってしまったベランダ庭園で、ファリスはぐっと背伸びした。 色々あったがまたこのリゼエッタに戻ることができた。 そしてマグルシュノワズもリゼエッタのものとなり、今やあの城はリゼエッタの軍の拠点地となりつつあった。 きっと昔よりはいい国になっていくことだろうと思う。 「君のおかげだファリス」 「ん?なにがだよ」 「俺1人だったらここまでやれなかった、と思う」 アッシュに頭を撫でられながら、 ファリスは照れてしまい変な顔をしてしまった。 各国を回って書印を集めてきたアッシュは ここ数ヶ月で随分頼もしくなったものだ。 何も知らないような綺麗な王子様だったのに、 悲しみを乗り越え強くなった。 「舞踏会が開かれる直前までは、 誰かと結婚することも義務だと思っていた。 人を愛するということの意味がまるでわからなかったんだ。 ..でもファリスと出会って、恋に落ちて... 本当に、心の底から愛しいと、 何に替えても守りたいと思ったんだ」 そんな風に口に出されると余計に恥ずかしくなってしまって、ファリスは口を尖らせた。 そんなのはこちらの台詞で。 1人でいた自分を追いかけてくれた、好きになってくれた。そんな彼がいたから自分は今ここにこんな気持ちで立っていられるのだ。 「ファリスと出会えてよかった...」 出会えてよかった。 こんなにも、そんな風に思える人がいただろうか。 ファリスは思わず彼の胸に飛び込んで背中に手を回した。

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