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第131話 恋とスパイは使いよう
「シアーゼちゃん....」
彼の肩に埋もれるように身体をくっ付けた。
暖かい温度。ずっと包まれていたくなるような、陽だまりのような心地好さ。
そんなものを他人に感じるだなんて、
このシアーゼともあろう者が。
「.......どんだけ振り回すのさ..。
まぁそういうとこも好きなんだけど」
マルクは呆れたように呟いてそっと頭を撫でてくる。
くすぐったいようなその指の感覚に、
シアーゼはくすくす笑って彼から身体を離し馬に飛び乗った。
「あっシアーゼちゃん!?」
驚いたようにこちらを見上げてくる彼にシアーゼは片手を振った。
「暫く戻らないと思いますけど、浮気したら殺しますよ」
それだけを叫び、颯爽と馬小屋から外へと飛び出した。
慌てて追いかけてきながらも、ええー!と声を上げるマルクを振り返り、そのアホ面が愉快で堪らなかった。
「愛してますよ!マルク!」
そんなことを言いたくなったから、
いよいよ終わりなのかもしれなかったが
不思議と心は晴れやかで、ぽかんと口を開いたまま
なんとも言えない顔で立ち尽くす彼のために
さっさと帰ってこないとななんて。
そんなことを思いながら、馬を走らせるのだった。
fin
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