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第130話 恋とスパイは使いよう
「.......寂しい」
意図しないようにしていた言葉を
容易くマルクは口に出す。
そういうところも腹立たしいし。
「指揮官ともあろう方がそう言うこと言っちゃいけません」
「シアーゼちゃんの前では指揮官じゃなくって、
ただの俺になっちゃうんだもん」
マルクの言葉に再びため息をこぼし、
シアーゼは彼を振り返って睨んだ。
「あのね、1回寝たくらいで彼氏面しないでもらえる?」
腰に手を当ててそう言うと、
マルクはわざとらしく目を見開いて両手で口元を覆った。
「そんな.....遊びだったっていうの!?」
ひどいわぁ、とどの口が言うのかと言う台詞を吐きながらマルクは泣き真似をした。
全くどこまでが本気で冗談なのか。
それは自分自身にも言えることなのだけれど、
俺は一体どこまで本気なんだろう。
「はぁ....マルク。ちょっとこっち来て」
そう言って呼ぶとマルクは大人しくこちらへ近寄って来た。
「はっきりとわかりました。
俺の中で優先順位は一番上は勿論ファリス様。
あなたは一番下です」
「ええ!!?」
「でも一番は一番ですよ?」
泣きそうな顔をしているマルクに、シアーゼは微笑みかけた。
「俺の中で、一番なんです。
意味、わかりますよね」
責任を、取って欲しいほどに、
きっと変わってしまっている。
何においてもファリス様が世界の中心であったはずなのに。
ファリス様かそうでないものか、
そんな世界が変わってしまった。
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