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志音のValentine's Day①
「ねえ、どうしよう……俺こういうの初めてだからさ、わかんないんだよね」
「俺だって初めてだよ! どうなんだ? でもさ、こういうのって気持ちの問題だろ? 好きにすりゃいいんじゃね?」
「じゃぁ、康介君はどうすんの? なんで教えてくれないんだよ」
「………… 」
もうじきバレンタインデーだから、みんなはどうするんだろうって思って、竜太君と康介君に聞いてるんだけど、康介君は何だかはぐらかして教えてくれない。
俺はここ数年は処理に困るくらい毎年チョコを貰ってたけど……今年は先生にチョコをあげてみたいと思っていた。
でもさ、男同士ってどうなんだろう? って思って。
おかしいかな?
街中ではどこもかしこもバレンタイン一色でしょ? キラキラした様子を見てるとクリスマスみたいにワクワクしてきちゃうじゃん。
そう思っちゃうのって、男なのに俺おかしいのかな? でもそうは言っても、もう自分の中では先生にチョコをあげるのは決定している事だった。だから「おかしくないよ」ってもうひと押し欲しいところ。
竜太君や康介君も 好きな人にチョコをあげるよって言ってくれれば俺もちょっとは自信がつくのに。
康介君は、はぐらかしてなかなか教えてくれなそうだから、俺は竜太君に話を振ってみた。
「僕は周さんにはチョコをプレゼントするつもりだよ。おかしいかな?」
やっぱりだ!
竜太君は周さんにチョコをあげるんだ!
「やっぱりいいよね? 俺もあげよう。変じゃないよね? 喜んでくれるよね?」
好きな人にチョコをあげたいって思うのが俺だけじゃなかったのが嬉しかった。
どんなのにしようかな?
手作りしちゃう?
なんだこれ……俺、女みたいだ。
でも女子は毎年毎年こんな気持ちで好きな人にチョコをあげるんだよね? 一大イベント感が楽しかった。
学校が終わり、一人帰宅する。
俺は考え考え、調べて調べて……散々悩んだ結果、手作りチョコをプレゼントすることに決めた。
今日は仕事もないし、一人キッチンでスイーツのレシピ本を開く。普段簡単なものだけど自炊もするし、多分大丈夫……少し練習すれば上手に出来るはず。
「これがいいかな、ガトーショコラ。美味しそうだし」
早速材料をチェックして買い物の支度をした。今日作る練習の分と、本番の分。買い物リストをメモに書き留め、俺は近所のスーパーに向かった。
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