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小さな訪問者⑫/僕だけを愛してくれればそれでいい

部屋に戻ると周さんは既にベッドの中。 「周さん……お待たせしました」 見ると目を瞑って眠ってる様子だったので、そっと僕もベッドに潜り込む。 「あ、周さんってば裸! 風邪ひきますよ。せめてパンツは履きましょ」 お風呂から出て何も着ないでそのままベッドに入ったのか、周さんは何ひとつ身につけていなくて僕は驚いて頬を軽く叩いた。 「やっときた。いや、どうせすぐ脱ぐしいいんだよ。おいで竜太」 両手を広げ僕を抱きしめてくれるけど、眠たいのか目は瞑ったままで僕のおでこにキスをする。 「周さん、疲れちゃいましたか? 今日は一日尚ちゃんの面倒見てましたもんね」 体力的に、というより精神的に疲れるよね。僕だって正直結構疲れてる。 「うん……疲れた。横になったら気持ちくて寝そうになった。でもエッチしたい」 もぞもぞと僕の首筋に顔を埋め、あちこちにキスをする周さん。何だか甘えられてるようで擽ったい。 「ふふ、お兄ちゃん偉かったですね。僕がしてあげるからそのままでいいですよ」 僕の体にキスを落としてる周さんの上に乗り、今度は僕がキスをする。気持ちよさそうに目を瞑る周さんにキスをしながら、自分も着ているシャツを脱いだ。 「お兄ちゃんはそのままでね……気持ちよくしてあげる」 「……お兄ちゃんって言うのやめろって。恥ずいから」 疲れて眠たそうだったけど、周さんのそこはもう元気。体勢を変え僕は周さんに跨り、滾るその先端にキスをする。ビクッと揺れるそこをゆっくりと咥え込み、味わうように舌を絡めた。 「あっ……竜太、気持ちいい」 背後に周さんの切ない声が聞こえ、するっとお尻を撫でられる。周さんの方にお尻を向けるこの体勢はちょっとまだ恥ずかしいけど、でも周さんが気持ちよくしてくれるから僕は誘うように腰を振った。 「周さん弄って」 「エロ……」 恥ずかしいけど、周さんが喜んでくれるなら平気。 「あっ……んん」 ゆっくりと周さんが解してくれる。僕は夢中で周さんのを咥え、なるべく声が漏れないように堪えた。だって声が出始めるともう快感に支配され止められなくなってしまうから。 「もう挿れていいですか? 周さんの……欲しいです。堪らない」 体勢を変え、僕は周さんの首に抱きつき腰を下ろす。 ゆっくりと入ってくる周さんを感じながらキスをした。 「竜太……竜太……」 周さんに組み敷かれ、強く抱きしめられながら名前を呼ばれる。 「竜太は……んっ……赤ちゃん、欲しい?」 「………… 」 ……こんな時に何を言ってるんだろう? 「いらない。周さん……でいい……あっ、ん……んっ」 周さんに揺さぶられながら、僕はなんとか返事をした。 結局周さんのペースで激しく揺さぶられ、イキそうになるのを堪えているのに周さんてば更に話を続けようと、息を吐きながら僕の耳に手を添える。 「竜太の奥に……んっ……もうこのまま孕んじまえばいいのに……」 囁くように言った周さんの言葉に僕の感情が一気に沸き立つ。 「やだ! 何でそんな事言うの?」 僕は「いらない」って言ったじゃん。そんなの望んでないって言ったじゃん! 周さんはやっぱり子ども、欲しいのかな…… 「あ……ごめん、違うんだ。深い意味はなくて…」 慌てた周さんが僕の中からずるっと出ていくから、余計に僕は悲しくなった。 「ごめん。ただ単純にさ、子どもでもできりゃ……男同士でも世間に認めてもらえんじゃねえのかなって。結婚だってちゃんとできるんじゃないかって、ふと思っただけだから。バカなこと言ってんな俺。別に子どもが欲しいとかじゃねーから、気にすんな……」 泣きそうになってる僕を抱きしめてくれる周さん。 そういうの、あまり気にしない周さんなのに、きっと僕がこんなんだから周さんまで余計なこと考えるようになっちゃったんだよね。 「……ううん、ごめんなさい。いいんです。誰からも認めてもらえなくても、ちゃんと僕は認めてるから。悪いことだってしてないし、僕が周さんと一緒にいたいんです。ずっと……」 僕も周さんを抱きしめ返す。 「僕は男なんだし産めませんからね。それより早く、続きしてください……」 僕は周さんにキスをせがみ、足を広げた。 周さんは余計なこと、考えなくていい。 僕だけを見て…… 僕だけを愛して…… 僕は周さんがいればそれでいい。 心の中でそう呟く。 「愛してるよ」 周さんの言葉に僕もこたえる。 そして抱きしめられたまま、朝まで眠った。 ── 小さな訪問者 終わり ──

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