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意地悪なのは…①/許してないから

修斗さんは最近調子に乗ってると思う。俺という彼氏がいながら他の女とデートってどういうことだよ。俺がちょっと咎めたら「仕事なんだからしょうがねえだろ」って修斗さんは笑って答えた。 わかってんだよ俺だってそのくらい。 ただもうちょっと申し訳なさそうな顔できないのかよ。俺が何でも許すと思って甘えてんだろ。まあ何でも許しちゃう俺も俺だけどさ。 修斗さんはかっこいいから……子どもの頃からずっとかっこいいからわからないんだ。俺みたいに「フラれるかも」なんて不安になったりしないんだ。 ……ムカつく。 久しぶりのデート。次の日もお互い休みだから明日までずっと一緒に過ごせる。 このあいだの喧嘩、修斗さんはすっかり忘れて仲直りしたと思ってるみたいだけど、俺、許してないからね。他の女とデートだなんて俺のことバカにしてる。 仕事だから── デートと言っても駆け出しのタレントと一緒にニューオープンのカフェの取材に行っただけ。 ……そうだよ、そんなのデートなんかじゃないよ。わかってるよ! けど、その様子がデートっぽいじゃん? 相手の女の子、芸能人だか何だか知らないけど修斗さんの腕組んだりボディタッチ多くて恋人気取りだったし、修斗さんも楽しそうでさ、まあ撮影だし? よそ行きの笑顔してるのはわかったんだけど、やっぱり俺としては面白くないじゃん。 俺がやきもち妬くの知ってて「近くだから現場見においでよ」なんて言ったんだ。 え? やきもちの度がすぎる? しょうがないじゃん! 俺、自信ないんだもん…… 「康介、今日はなんかシラけたツラしてんね?……つまんない?」 靴を買いたいと言う修斗さんに付き合って、靴屋で物色中。それ試着何足目? ってわかんなくなるほど色んな靴を取っ替え引っ替えしていた修斗さんがいきなり俺の胸ぐら掴んで怖い顔してそう言った。 「いや……別に。あ、その靴いい感じ。修斗さん似合ってますよ」 「そう? 康介がそう言うならこれにしよっかな。色……これでいい?」 俺が褒めたら怒った顔が一変して、いつもの可愛い修斗さんの笑顔。つられて俺も笑顔になった。 「じゃ〜、康介はこっちね。ふふ、おそろ」 「え?」 修斗さんは棚から同じ靴を取り俺の前に置く。修斗さんはネイビーのスニーカー。俺の前には色違いの黒いスニーカー。 「はい、履いてみ? サイズこれでいいだろ?」 修斗さんはちゃんと俺の足のサイズを知ってくれてる。服だってそう。二人でよく買い物に行くから俺も修斗さんのサイズは大体わかってる。 「ぴったりだけど、俺、買いませんよ? 今日そんなに金持ってきてねえもん……」 「いいんだよ。俺が買うの。初めからそのつもりだったし……いいんだろ? この靴で」 「………… 」 何で俺に? 誕生日でも何でもねえよな? どういう風の吹き回し? あ……俺に後ろめたいことでもあるから? 一気に嫌なイメージが湧いてくる。俺に対して何かの侘びのつもりか?……なんて。どうしても素直に喜べなかった。 「そんな顔すんなよー。こないだちょっとだけど臨時ボーナスがあったの。ほんとちょっとだけだけどな。なんか嬉しかったから康介にも嬉しさおすそ分け」 はにかんで笑う修斗さんに言葉が出ない。 俺ってばせっかく修斗さんと二人っきりでデートだっていうのに嫌なことばっか考えてた。 ダメだな。ごめんね修斗さん。 俺は心の中で修斗さんに謝って、気持ちを切り替え今日のデートを楽しむ事にした。

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