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意地悪なのは…②/不機嫌

「どうする? ちょっと早いけど飯行く?」 靴を買い店の外に出ると笑顔の修斗さんがそう言って振り返る。俺はそんな修斗さんの手を取った。 「コンビニ……」 俺たちはラブホに行くときは決まってコンビニに寄り、食い物や飲み物を買って行く。コンビニって言えば修斗さんには俺がどうしたいのかすぐに伝わると思ってそう言った。 「え?……早くね?」 ちょっと顔を赤らめて修斗さんは小声で言う。 「早くない……二人になりたい」 周りに聞こえないよう、俺も修斗さんの耳元で小声で言った。「しょうがねえな」と、修斗さんは俺が掴んだ手を振りほどいて先を歩く。手は振りほどかれたけど、少し嬉しそうな修斗さんの声に心が踊った。 コンビニで弁当とおにぎりを買う。修斗さんはオニギリと、食後のデザートにとシュークリームをカゴに入れた。修斗さんがデザートを買うのもいつものこと。俺は買わないけど決まって「ひと口どうぞ」とお裾分けをくれる。「美味いだろ?」ってはにかむ修斗さんは凄え可愛いっていつも思う。こんな顔、俺の前でしか見せないのも知ってるから、俺は特別なんだって優越感に浸れる。 コンビニを出てすぐの路地を入った先にホテルがある。ここは人通りも少ないから、周りを見てからその時の気分で、修斗さんは手を繋いできたり腕を組んだりしてくれる。でも今日はスタスタと先を行ってしまい手を繋いでもらえなかった。ちょっと淋しいな……なんて思ったけど、まあ毎回ってわけじゃないしこういう時もある、と気を取り直し俺は修斗さんの後をついて行った。 「………… 」 あれ……? ホテルの部屋に入っても修斗さんは黙ったまんま。なんだろう、機嫌が悪い? 一人さっさと部屋を進み、ベッドサイドの小さなテーブルにコンビニの袋をぽんと置く。そしてどすんとベッドに座り、俺の方を見もせずにテレビをつけた。 ……なんだよ。 さっきまで機嫌良くなかったか? なんで急に怒ってんの? 俺、なんかやらかしたかな。 見てると修斗さんの頬が少し膨らんで、ちょっと乱暴にテレビのリモコンをぽちぽちし始めた。この「どうしたの? って早く聞けよ!」って言わんばかりの不機嫌アピール。 そんな風に振舞わなくてもすぐ聞くから……あんたが機嫌悪いと不安になるんだよ。いい加減わかれよ。 ちょっと冷たくされるだけで泣きそうになるのもどうにかしたい。俺にわからせようとしてわざとそうやってるのもわかるから、余計に堪えるものがある。 「修斗さん、どうしたんですか? 何か怒ってる?」 「別に……」 少しはこっち見ろよ。別に……なわけねえじゃんか。 「ごめんね。言ってくんなきゃわかんないよ。どうしたんですか? こっち見て」 俺は全然見てくれない修斗さんの隣に座り、頭を修斗さんの肩に擦り寄せた。 「康介の方が最初に怒ってたんじゃん。なのに何なん? 俺が靴プレゼントしたらころっと態度変えて……俺って康介の何なの? 財布? エッチしたい時の都合のいい相手?」 ……? この人は一体何を言ってるんだ? 「康介は俺のことちゃんと好き?……不安にさせんなよ」 ……は? 「何だよそれ! そっくりそのままその言葉お返しするよ! ふざけんなよ! いつも修斗さんの気まぐれに付き合わされてんのは俺だよね? 何今更そんなこと言うんだよ」 修斗さんの言い分にむちゃくちゃ腹が立った。「不安にさせんなよ」って何なの? こんなに修斗さんのこと好きなのに……まだわかってもらえてないの? 嘘だろ? 不安にさせてんのどっちだよ! ……なんだかもう脱力。

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