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賑やかなクリスマス⑦/メリ—クリスマス

 終始修斗の膝の上で料理を堪能した尚は、すっかりご機嫌で今度は竜太にくっ付いて楽しそうに後片付けの手伝いをしている。そんな二人を遠目に見ながら康介はため息を吐いた。 「尚ちゃん、俺のところに全然来てくんなかった……」  ケーキをちまちま口に運びながらテ—ブルで一人ぶすくれている康介の横では、修斗が我関せずと言った顔で残りのシャンパンを飲んでいた。 「修斗さんもカップルかよってくらいわざとらしくいちゃついてるしさ、なんなの?」 「尚にとって康介はイケメン認識がなかったんだろ。しょうがねえよ。あんなチビに嫉妬すんなって」 「は? 嫉妬なんてしてないし! それに何? 周さん、それ慰めになってないからね。俺だってそこそこイケメンだし! 尚ちゃん面食いなの? 修斗さん来るまでは俺にも構ってくれてたのにさ」 「いや、イケメンじゃねえだろお前は」 「周さんうるせえよ。俺のこといじめてないでさっさと竜のとこ行って片付け手伝えよ」  こうも付き合いも長くなれば、すっかり遠慮なく俺にものを言う。ちょっとムカついたけど、いじけてる康介に修斗がちょっかいを出し始めたから康介の言う通りに俺も竜太の手伝いを始めた。竜太が洗った食器を危なっかしい手つきで尚が拭いているから、俺もその横に立ち尚のフォロ—をする。尚は「自分でやる!」ってちょっと拗ねたけど、ちょうどお袋が迎えにきたから助かった。 「みんな来てたんだね。尚、よかったね。いっぱいお兄ちゃんたちいて楽しかった?」 「あ、お久しぶりです。尚ちゃんめっちゃ可愛いですね。さすが雅さんのお子さん、よく似てるね」  修斗がとってつけたようなおべっかを言い、そんな修斗を見た尚はお袋と比べられたのがお気に召さなかったようで、頬を膨らませて「ママ似じゃなくて尚が可愛いんだからね!」と文句を言った。普段はお袋と似てるって言われたら喜んでるのに、お袋も困った顔をして尚を宥めていた。  バタバタと帰り支度をするお袋に、尚は「ここに泊まる」と駄々をこねる。よっぽど楽しかったんだと、不機嫌な尚とは対照的に嬉しそうなお袋に礼を言われた。そして別れ際、尚は修斗にだけ熱烈なハグをしてメソメソと帰っていった。 「疲れたけどすごく楽しかったですね。尚ちゃんも喜んでくれたみたいでよかったです」  竜太に限らず修斗も康介も滅多にない経験ができて楽しかったと笑う。確かに幼稚園児相手に一日過ごすなんてあんまりないことだよな。俺はただただ疲れたけど…… 「修斗さん、さっき尚ちゃんと何を内緒話してたんですか?」  帰り際、尚にハグされながら何か耳打ちされていたのはなんとなく俺も見ていた。康介はまたぶすっとしたまま「俺ちょっと聞こえちゃった」と修斗を睨む。 「ああ、尚ちゃんにプロポーズされちゃった。大きくなったら結婚してね、だって」 「だからって! なんで楽しみに待ってるね、なんて言ってんですか。浮気者……」  チビの戯言を真に受けてる康介もどうかと思うけど、修斗も修斗で適当な返事をしてんなよ、と若干呆れる。案の定、康介と修斗のくだらない痴話喧嘩が始まりそうになり、慌てて竜太が仲裁に入った。 「いや、そしたら修斗も俺の身内になるのか……俺の弟? ちょっとやだな」 「周さん! そこじゃねえよ、何言ってんの? ダメだかんね!」  冗談の通じない康介が笑える。竜太に「康介を揶揄うな」と怒られたから俺はちょっと黙る。修斗も半分は揶揄い混じりに喋ってるから、まあいつものことだし早くコイツらも帰らねえかな……と、竜太と二人きりになった時のことを考えることにした。だって今日はクリスマスだって言うのに、今日一日なんも甘いことがなかったなんてつまらない。そもそも今日は竜太と二人で過ごす予定だったんだ。 「だって絶対尚ちゃん美人になるじゃん。大きくなってもずっと修斗さんのこと思ってたらどうするんですか。俺、尚ちゃんに勝てる気がしねえ……」 「康介もバカなこと言ってないで。そんなことあるわけないでしょ」 「だって、わかんねえじゃん。やだよ俺……修斗さん取られちゃう」 「安心しろ。尚は修斗にはやらん」 「でた! 周お父さん……ウケる」  いつまでもぶつくさ言ってる康介を宥め、やっと二人が帰っていった。竜太は「今日はほんと楽しかったですね」と満面の笑みで俺を見る。その可愛い笑顔に堪らなくなり、俺は竜太に抱きついた。 「やっと二人になれた……」 「ふふ、周さん、メリ—クリスマス」  竜太も俺に抱きつき、顔をあげてキスを強請る。  軽くキスを交わし、毎年クリスマスを一緒に過ごせることに感謝しながら、今度は二人きりのクリスマスを楽しんだ。 ── 賑やかなクリスマス 終わり──

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