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拒絶・礼於side
「うわぁ!」というミナセの声が耳に届いてハッとする。自分の冷静な部分が体を一気に冷やしていった。
「ミナセ!!」
他の奴にヤられてんじゃねえかと血相を変えて振り返ると、当のミナセは地面と仲良くしていた(他の馬鹿共はいなくなっていた。仲間が殴られてんのに薄情な奴らだ)。…また転んだのか。マジどんくせえ奴だな。
怒りも忘れて脱力していると、がばっとミナセが起き上がる。オイまた鼻血出てんぞ。綺麗な顔が台無しだな…
しかし鼻血だらけのミナセはキラキラした目で俺を見た。「名前…」と喜色満面で言う。
「今、レオくん僕の名前呼んだ!!」
俺は『は?』と眉をひそめ、そしてそういえば呼んだことが無かった事に気付いた。
だが…それがそんなに喜ぶ事か?つまんねえ人生送ってんな。
だけど。
なんかムズムズする。口元が緩みそうになり手の甲で隠す。
何だこれ。気恥ずかしいけど嬉しいような…
でも、その時ミナセが叩かれた光景を思い出して心が沈んだ。
フーと息を吐き拳を握る。「おい」となるべく冷たく聞こえるよう無感情に告げた。
「これで懲りたろ。俺はヤンキーだからこんなこと日常茶飯事だ。もう痛い思いしたくねえなら二度と俺に近付くな」
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