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素直になれない男2

あれは2年前、二丁目のゲイバーで瑛汰と思わぬ再会を果たし、旧交を温めんと、後日ふたりで飲みに行った時のことだ。 自分も瑛汰も酒が強く、何杯でも呑めるクチだったため、個別にメニューを頼むより飲み放題付のコースを注文する方が安あがりだろうということで、その店オススメのコースを飲み食いしながら、初めて瑛汰とまともに喋った。 高校時代、同じ部活に所属していたものの、短距離と長距離では練習メニューも違えば、大会や遠征もぱっかりと別れていることが多く、関わる機会がほとんどなかった。 けれども、清涼感のある端整な顔とすらりと長い手脚、クールで一見取っつきにくそうだが、打ち解けた相手には人懐っこくなるため、女子からは密かに人気がある、ということはよく知っていた。 確かに、その通りだった。最初はえらく緊張していたが、酒を飲みながら会話をするうちに、瑛汰の口数は増えていった。2時間ではとても話し足りないくらいで、次の約束を取りつけるのは容易かった。 何よりも覚えているのは、コース料理の最後の一品として餡蜜を出された時のことだ。 饒舌ではあったが、瑛汰は涼しげな表情を崩すことはほとんどなかった。けれどもそれを目の前にした途端、黒々とした瞳を輝かせたのを見て、竜士は思わず目を丸くした。 さらに、それをひと口食べた瞬間の、瑛汰の蕩けんばかりの微笑みを目の当たりにすれば、胸に目掛けて矢が刺さったかのような衝撃が走った。 刺された心は甘く痺れ、身体の芯がくらりと揺れる。腹の奥底から熱い燻りを感じ、潤っているはずの喉がカラカラに渇くようだった。 恋に落ちる時とは、呆気ないものだ。ものの数秒で、竜士の心は瑛汰に捕らえられてしまった。今となっては懐かしい、どんよりとした曇り空が覆う秋の夜のことだった。 ……瑛汰を愛している。 禁欲的な痩身でも、贅肉をまとっただらしのない身体でも。 それに、負けず嫌いなところも、素直じゃないところも、努力家なところも、ぽっちゃりとした女性に嫉妬し、やけ食いをするところも。どんな彼でも心の底から惚れている。 中でも、甘い物を食べて顔をほころばせている姿が、一番可愛くて愛おしい。 ……なんてこと、本人には決して言わないけれども。

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