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遠くの夕焼けに初恋、消えたー4

「よっ!」 朝、治夫はいつもの場所で僕を待っていた そしていつもと変わらず、僕を見ると笑って挨拶してくる。 僕は唇を噛み締めると、何も言わず治夫の前を通り過ぎた。 「な~に、シカトしてんだよ?」 黙って通り過ぎようとした僕を気にすることなく治夫は、僕の肩に腕を回す。 その腕を振り払い、治夫を睨む。 「寧音と笑ってたんだろ、僕の事。馬鹿にして」 「…え…何?」 「もう勉強、教えてくれなくていいから。僕の前に現れないで」 「ちょ…待てよ!」 さすがに僕が普段と違うことに気付いたのか、治夫は僕の手首を掴み、立ち去ろうとした僕を引き止める。 「どうしたんだよ。言いたい事があるのなら、はっきり言えよ」 「…その言葉、そっくりそのまま返してやるよ。寧音と付き合っているなら、そう言ったらよかっただろ!!」 僕は掴まれた手を振り払い、叫ぶ。 「………何の事?」 白々しい。 「昨日…教室で、見たんだ。寧音と治夫」 僕がそこまで言うと、治夫は流石に顔色を変えた。

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