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遠くの夕焼けに初恋、消えたー12
何が起こったんだ?
「あの日、寧音が言ったんだ。“隼人とキスした私とキスしてみたくない?”ってね。まさかその場面を隼人に見られていたなんて気付かなかったけど」
治夫は呆然としている僕に、唇を近付けてきた。
固まった僕に、治夫の整った顔が近付いてくる。
…なんて、悠長に固まっている場合じゃない!!
気をしっかりもつんだ!!
「ちょ、ちょ、ちょっと、ま、待て!!」
裏声ながらも、何とか声が出た事にホッとする。
「…何?」
だ~か~ら!!
そんな甘い眼差しで僕を見るな~!!
…間違っている。
分かんないけど…色々と間違っているぞ、治夫。
「…おっ、男が好き、なのか?」
「まさか。隼人が好きなだけ」
クスリと笑って、答える治夫。
ん?
僕が好きなだけって…。
ま、まさか…もしかしてとは思うが、万が一にも勘違いしていたら…。
「ぼ、僕は男で…」
「知ってる」
そうか。
知ってたのか。
そりゃ、よかった。
…じゃなくて!!
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