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恋と嘘と現実とー44
こんな不機嫌そうな千尋の顔、僕以外に知っている人間はいないだろう。
皆の前で絶縁宣言した僕が許せないらしい。
…別に許してもらわなくてもいいけど。
僕にだって言い分はあるし…。
「…治夫にバレた」
「………ふ~ん、そう。だから…?」
僕の言葉に千尋は不機嫌な顔のまま、平然と答える。
何がバレたのかも聞かずに。
驚いた顔もしていない。
という事は…やぱり千尋が、バレるように仕向けたのか。
でも、そんな事をして千尋に得する事なんてないだろうに。
それどころか、治夫以外の人間に見られる危険もあった。
…千尋の考えている事がさっぱりわからない。
わからないけど治夫にバレてしまった以上、千尋と関係を続ける事はできない。
だって、僕が好きなのは治夫だから。
昨日、治夫に手を繋がれて帰った時に再認識した。
治夫に誤解されるような事はしたくない。
…いや、千尋と関係を持った事は誤解じゃないし、事実なんだけど…僕のこの気持ちまで誤解されたくない。
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