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恋と嘘と現実とー47
「隼人!大丈夫か?」
「…何が?」
「…いや…隼人のクラスに行ったら、隼人は松山と出ていったって聞いたからさ…」
…千尋と一緒にいる僕の事を心配して、捜していたのか…。
…馬鹿だな…。
そんなに息を切らして、汗を流して…。
僕を捜して…。
「…大丈夫か?」
……ああ…やっぱり僕…治夫の事、好きだなあ…。
「うん、大丈夫」
「…本当に?」
心配そうに僕を見詰める治夫に、笑って答える。
「うん…本当にもう、大丈夫だから」
「…そうか」
「うん」
…やっぱり、この想いは隠しておこう。
僕と治夫は幼馴染みで、親友。
それでいいや。
僕の記憶がないのに、僕の事を友人で親友だと思い、心配して捜してくれる。
それで十分。
恋人なら別れる事があるかもしれないけど、親友は一生、親友だ。
それでいいや。
治夫と並んで廊下を歩き始めた僕は、溢れそうになる涙を隠すため、顔を窓の外に向ける。
……僕と治夫はお互い、擦れ違いの片思いだったな…。
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