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いつか、君の声がー19
『……………会いたかった』
-どうしてこうなっているんだ…?
訳が分からないまま…僕は今…何故か、治夫に抱き締められている。
(…初めて学校をサボってしまった)
久し振りに治夫を前にして…情けなくも…涙を流してしまった…。
………というか。
そんな事より。
-不覚だ………。
不覚だ。
不覚だっ!!
『…………会いたかった』
言いたい事は山ほどあったはずなのに。
胸がいっぱいで。
何も言えなくて。
やっと口にした言葉が。
『……………会いたかった』
そ、それも皆の前で。
皆の前で。
皆の前でっ!!
あ、あれじゃ、ま、まるで………ぼ、僕が治夫を好きで、治夫に…こ、告白をしたみたいじゃないか………っ。
………………………………………………………………。
………………………………ん?
いや、待て。
僕が治夫を好きなのは間違ってない。
治夫に告白をしようとしてた事も間違いない。
というか。
告白どころか、皆の前でキス(それも濃厚なヤツ)をして治夫に僕の本気を見せてやろうと考えていたんだよな…。
だったら、いいのか………?
………いや、でも、あれは告白するより恥ずかしかったような気が………。
その時。
「………何、1人で百面相してんの?」
耳元で低い+エロい声がして、ゾクリとすると同時に、僕は我に返った。
………………………………………そうだった!!
僕はがっちり治夫の腕に抱きしめられているんだった!!
『……………会いたかった』
泣きながら呟いた僕の言葉を聞いた途端。
それまで少し困ったように眉を下げて僕を見ていた治夫は、椅子を蹴倒す勢いで立ち上がり、涙を拭っている僕の手首をむんずとつかむと、教室を…いや、学校を飛び出した。
そして。
僕は。
(………初めて学校をサボってしまった)
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