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 行き交うスタッフや共演者が口々に挨拶してくるので、律儀にもそのすべてに対応していた聖南の事を、お目当ての子とLINEを交換するためにそこに居るなどとは誰も思わないだろう。  さっさと帰ればいいのに、と誰かしらに言われても仕方がないほど、不自然にそこに居た。 『遅いなぁ、着替えてメイク落とししてももう出て来てもいい頃だよな? あ、なんかお偉いさんっぽいの入って行ってたから、長げぇ話聞かされてんのかなぁ? かわいそー』  そんな事をのんきに考えながら、聖南は壁に凭れて葉璃が居るはずの控え室を凝視した。  その一方、あまりにも来ない待ち人に焦れているのは聖南だけではなく、マネージャーの成田一平三十三歳も同様だった。  これから事務所に行って作曲家と会い、次回のシングル曲の話し合いをしなければならないのに、作詞も手掛ける聖南がなかなか降りてこないので、イライラし始めた。  けれど先にやって来たアキラとケイタから大体の事情は聞いたので、あと十分だけ待ってやると勝手に決めてスマホを助手席に投げる。  車内のテレビでも見て待ち時間を紛らわそうと顔を上げた先に、女性七名とスタッフらしき者らが二台に分かれて車に乗り込もうとしているのが見えた。  あれは先程CROWNと共演していたmemoryとそのスタッフだと、成田は一瞬で分かった。  何気なく見たその先に、女の子達の中に深く帽子を被ったショートカットのボーイッシュな女性が居るのに気付いて、今は色んなタイプの子がいるんだなとのんびり思っていたがハッと我にかえる。  ここにmemoryが居ると言うことは、待ち伏せしている聖南は待ちぼうけを食らうではないか。  成田は、たったいま投げたスマホを慌てて回収した。 「あ、セナかっ? 待ち人はもう車に乗り込んでるみたいだぞ」 『はぁ!?! どんな早業使ったんだよ! すぐ降りるから引き止めとけ!』  慌てた様子で一方的に電話を切られた成田は、その場で天を仰いだ。  通話の会話が聞こえ、事を察して見兼ねたケイタが後部座席から身を乗り出し、成田の肩をポンと叩いて慰めた。

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