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「そうだ。 CROWNのイメージも下がる一方だ」
「すでに新曲の売り上げの伸びも落ち込んできている。 世間が納得するように事務所として対策を練らなければ」
「あぁ、そうだな。 CROWNは活動停止にして、セナだけ一定期間謹慎というのはどうだろう。 これだけ騒ぎが大きくなっているのだから、本来なら解雇事由にあたるがそれは重すぎるやもしれん」
この会議の場が設けられた時点で、まぁそういう結論が妥当だろうな、と予測していた通りの展開だ。
それだけ軽率な事をしてきたのだ。
社長の呼び出しがあったその時から聖南はどんな処分でも受ける覚悟は出来ていた。
葉璃には申し訳ないが、状況が変わった今、しばらく会えなくなる事も受け入れるしかない。
専務や常務が先陣を切っているため、この結果で決まったも同然だと聖南が諦め掛けた時だ。
そんな幹部達へ異論を呈したのは、黙って聞いていたアキラとケイタだった。
「確かにセナは相当遊んできましたけど、それを黙認してたのはあなた方じゃないですか」
「昔から仕事はキチッとこなしてたし、どんな無茶なスケジュールも文句言わずに働いてきましたよね? セナ、業界関係者から何て言われてるか知ってます?」
「ちょっ、お前らやめろって……」
まさに喧嘩腰で、立ち上がってまで食ってかかり始めた二人を慌てて止めるが、その勢いは止まらない。
たじろぐお偉いさん方は、よもや聖南本人ではなくメンバーから反論がくるとは思っていなかったようで、「な、なんだ…」と小さく呟くに留まっている。
「セナが居てくれるから番組が成り立つってどの局行っても言われますよ。 セナがこの事務所と俺らのためにどんだけ労力使ってきたと思ってるんすか!」
「セナが謹慎なら俺らも同時期に謹慎します! 全部まるっと仕事キャンセルしてくださいよ!」
「お前らやめとけって」
これは聖南個人の問題であり、二人がそう強く出る事はないと珍しく聖南は慌てた。
だがアキラとケイタの怒りたるや凄まじく、聖南は力説への感動の前に二人の立場が危うくならないか、そちらの方が心配だった。
「キャンセルだと? そんな事が出来るはずないだろう!」
ついに憤った専務が立ち上がったが、二人は動じない。
幼い頃から兄弟のように顔を合わせてきた二人が、聖南の内面と外面に気付いていないはずがなかった。
聖南の生い立ちについてももちろん知っている。
それが彼の心のバランスを崩している事にも。
仕事ではその場に居る全員、誰ひとり嫌な思いを抱かせないように気を配り過ぎるほど真面目に取り組み、だからこそプライベートで羽目を外さなくては自身を保てないのだろうと、アキラとケイタはそう感じていた。
長くマネージャーを努める成田もそうだ。
マスコミが知っていた事を事務所が知らないはずもなく、騒ぎにならないならと今まで蓋をしていたのに、溢れ出てしまった情報を庇うでもなく聖南一人に罪を被せようとするその卑怯さに二人はブチ切れた。
「セナが全部悪いってセナ本人が認めてるのに、事務所はセナに全責任押し付けて終わりなら、俺らもその責任被らせて下さいよ!」
「CROWNのメンバーだから、当然、いいですよねっ? 今の俺とアキラが演技の仕事できてんの、セナのおかげなんだからな!」
「最近入った新人じゃあるまいし、これだけ事務所に貢献してるセナを解雇事由にあたるだなんておかしい! 謹慎? 活動停止? そんなの事務所のプラスになると思ってるんですか! 何のための事務所なんだよ!」
「セナの悪評ってどう見ても世間だけじゃん! 大切なのは現場の意見とファンの人達じゃないんすか!? 仕事で認められてる人間は、世間の評価なんか関係ない! 今たとえ後ろ指指されても、セナならそれバネにして何百倍もデカい事して世間見返してやるのに!」
「───ケイタ落ち着けって。 アキラも。 二人とも座れ」
CROWNでは末っ子の成人したばかりのケイタが一番ヒートアップし始めて、事務所としての対応や幹部達の聖南を見る鋭い視線が許せないのか涙ぐんでいる。
聖南は、二人の思わぬ反論が嬉しくもあり、照れくさくもあった。
もしも最悪、この事で三人まとめて事務所を追われたとしても、聖南が二人を引っ張ってどこへでも羽ばたかせてやりたいと強く思ったほどには、胸が熱くなった。
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