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 何かにがんじがらめにされて身動きが取れなくて、半泣きで夢の中でもがいて飛び起きるとその犯人は聖南だった。  すごく近くに顔があってビックリしたんだけど、綺麗な顔ですやすやとよく眠ってるから静かに驚くに留めて聖南の腕に収まり直す。  ガッシリと体を抱き寄せられてたし、体格差を考えたらそりゃ苦しいはずだ。  聖南の背中越しに見える窓の外が薄っすらと明るくなり始めていて、何時だろうと壁掛けの時計に視線をやると六時を少し過ぎたところだった。  昨日は雑誌の撮影だって言ってて、今日も仕事が入ってるのかは知らないけど、もう少しだけ……と聖南にくっついておく。  聖南は何時頃帰ってきたんだろう。  明らかにしょんぼりした聖南から電話をもらった時は、不謹慎ながら俺を頼ってくれて内心嬉しいと思ってしまった。  だけど、聖南父と出会し、根が深そうな過去を抱えている聖南の落ち込みように気が気ではなかったのも本当で。  電話口の声だけで分かったくらい、思いっきり生気を削られた聖南を何とかして励ましたかった。  俺がどうこうできるとは到底思えなかったけど、明らかに凹んでる聖南を見過ごせるはずがない。  聖南との電話のあと、すぐに母さんに今日は聖南宅に泊まるとメッセージを打って、レッスン終わりにそのまま電車に飛び乗り、マンション近くのコンビニでお弁当を買った。  聖南の自宅に入るには、管理人さんとコンシェルジュさんという二つの難関をクリアする必要があったけど、そこは人見知りな俺……頑張った。  入ったら入ったで聖南の部屋なのに聖南が居ないのが寂しくて、お弁当も美味しいと思えなくて。  でも仕事で遅くなるって言ってたから仕方ないって思い直してシャワーを借り、ベッドルームに放ってあったあのパーカーを着てそのままそこで眠ってしまってた。  どれだけ遅くなっても聖南をちゃんと待ってて、聖南の話を聞いてあげるつもりだったのに。  慰める予定が大幅に狂い、俺は単に聖南の家で一人暮らし気分を味わっただけになってしまった。  一体何しに来たんだと自分に腹が立ったけど、寝ちゃったもんはしょうがない……。  チラッと聖南の寝顔を覗き見ると、相変わらず寝ている姿さえカッコよくて、いつまででも見てられる。  眉は少し上がり気味で、強めの口調と合ってて。  笑うと八重歯が見える口元は今は寝てるから引き締まってるけど、男らしく大きめな唇は温かくて柔らかい。  この唇が、俺の色んなところにキスしてきてたのを思い出して一人で照れた。  もう眠れもしないから、聖南が寝てるのをいい事にジーッと穴が開くほど凝視した。  主にコンビニで見掛ける事が多かった、ファッション雑誌の表紙に居た綺麗な男が、こんなにもすぐ傍で、しかもバスローブ姿という無防備な格好で寝ているなんて正直まだ夢を見ているみたいだ。   飽きる事なく聖南を見詰め続けていた俺は、突然聖南のスマホのアラームが鳴って、心臓が口から飛び出るかと思った。 「……ッッ!!」  俺の体がビクッと揺れて、さらにアラームの音のけたたましさに起きたらしい聖南は、まだ瞳を閉じたまま頭上にあるスマホを指先で操作している。 「……はよ、葉璃」  眩しそうに左目だけ薄っすら開けて俺を確認した聖南と目が合って、俺も「おはよ」って返した。  朝の気だるそうな起き抜けの聖南を初めて見たけど、纏う色気が凄まじい。  ギュッと一度抱き締められて髪を梳かれると、ドキドキしながらもまた眠ってしまいそうなほど心地良かった。 「仕事前に葉璃を学校に送るから。 もうちょいこのままな」 「…………はい」  え……送ってくれるの?  俺は自他共に認めるほどめちゃくちゃ支度が遅い。  電車とバスを使うならそろそろ準備しないとって思ってたから、送ってくれるならいいやとそのままジッとしといた。  まだまどろむ様子の聖南は、俺を完全に抱き枕のようにして足まで絡ませてきたんだけど……。 「…………聖南さん、……あたってる」 「あー生理現象。 なんてな」  フッと聖南は余裕そうに笑ってる。  男だから朝勃ちなんて驚きはしないけど、グイグイ押し当ててくるのはどうかと思う。  それも完全に熱と質量をギンギンに保っていて、少なからず動揺してると、痛いほど強く抱き締めてきた。 「学校ある日はヤんねぇから安心しろ。 学業優先」 「前科あるじゃないですか……」 「あれはノーカンっつー事にしといて」  分かってるから皆まで言うなと言外に聞こえて、つい可笑しくなった。  聖南とエッチしたくないわけじゃないけど、さすがに学校がある朝はキツイかもしれない。  長くしつこく愛されて疲れ果てるのは必至で、ヘトヘトのまま授業を受けるのはきっと無理だ。  ただでさえ前回は聖南の体力に全然追い付けなくて、途中で意識飛ばした俺だもんな。  しばらく二人で抱き締め合ってまどろんで、俺と聖南は一緒に支度を始めた。  着替えたり歯みがきしている間に聖南が準備してくれていた甘いコーヒーを飲むと、頭が冴えてきたのが分かる。  俺は二つのコーヒーカップを聖南が着替えている間に流しで洗い、支度が出来たところで二人で家を出た。  なんか……何気ない恋人同士の朝って感じですごく照れた。

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