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29♡ ※

29♡ 急に大声を出した聖南に驚いてたところに、覆い被さってきた聖南の肩口におでこをぶつけたけど、「痛いよ」などと軽口を叩ける状態ではなかった。 自分で動けとしつこく言われてたはずなのに、俺を押し倒した聖南はもう腰を振りまくっていて、そんな聖南の背中にしがみついて内壁を擦られる快感に喉を枯らした。 「あっ…あっ…あっ……や、あっ……も、もう……だめ…っ…」 「触んないでイケるんじゃね?」 「んぁ……っ…んっ…あっ……あっ……」 早い打ち付けに、俺は自分のものを触る余裕すらなくて、聖南の動きに合わせる事で必死だった。 聖南のものをより深く感じようと自ら腰を浮かせると、力んでしまった穴をキュッと窄める事になってしまって。 眼鏡の奥で二重の瞳が細められた瞬間、グッ、グッ、と二度、一際強く中を擦られた。 ピンポイントなその刺激が背中から指先までビリビリと走り抜けて、俺も聖南とほぼ同時に果てて胸元まで精液を飛ばしてしまう。 「……はぁ…………はぁ……んっ」 凄かった…と息を整えていると、聖南は俺の酸素を奪い取りにきたかのように唇を合わせてきた。 「んっ………くるし……っ」 「………はぁ…葉璃にお仕置きはまだ無理だな。 俺が」 「……十分、お仕置きだったよ……」 こんなに恥ずかしくて戸惑った事はないかもしれない。 無知な俺には刺激が強過ぎて、何をどうしたらいいかも分からなくて泣けてきた。 聖南の嫉妬が愛情によるものだと分かった上で受け止めたかったけど、俺にはまだまだ無理そうだ。 「もう俺が眼鏡掛けた時点で葉璃にとっては違うだろ? 全然目合わせてくんないし」 それは…と言葉を濁す。 男としてカッコいいと尊敬し、実際外見までパーフェクトなんだから、ドキドキして、エッチしてる最中に見られるはずないじゃんか。 「じゃ次やっか」 「え!? まだやるんですか!」 「当たり前だろ。 いっそこのままやっちゃうか。 抜きたくねぇ」 「………………………」 でも出した後だとゴムずれっからな〜と言いながら聖南は渋々抜いて、いつものように手慣れた手付きでコンドームを変えて先端を押し当ててきた。 この素早い動作は、聖南の経験値をまざまざと見せ付けられてるみたいでちょっとだけ胸がチクっとする。 「聖南さん………」 「ん?」 「それすごく慣れてますよね…」 「それ?」 聖南の中では普通の事らしくて、俺の言わんとする事が分かんないと首を傾げている。 「あ、いや……何でもないです」 聞きたくない事を聞かされたら嫌だから、自分から言っといて知らん顔をしたけど、口を閉ざした俺を聖南は中に入ってきながら「なんだよ」と不機嫌そうに見下ろしてくる。 墓穴掘っちゃったかな…。 「何、慣れてるって?」 「んっ……その………ゴムつけるの」 「あ、あぁ、それか。 まぁ人並みに経験してる事だからな。 葉璃は気にしなくていい」 明らかに少しだけ動揺した聖南は、それを悟られまいとしてるみたいだけど、一番嘘がつけないアレがピクッと俺の中で動いた事で余計胸がざわつく。 「人並み? 聖南さんが人並み?」 「何だよ突っかかってくるなぁ。 今頃ヤキモチ?」 「今頃じゃないです。 最初から…慣れてるなぁって、ずっと思ってました」 「……………………」 正直に言ってしまうと、聖南が口元を押さえて固まってしまった。 数秒の沈黙の後、ジーッと俺を見詰めて笑顔を零す。 「…これか。 ……ヤキモチ焼かれんのっていいな」 「は!?」 「葉璃がさ、ヤキモチ焼かれんの嫌な気はしないって言ってたじゃん? はぁ?って思ったけど…気持ちよく分かった」 「えぇ………」 「不安とか卑屈な思いとかナシで、今のってヤキモチだろ? なっ?」 期待を込めてそんな事を言わないでほしい。 嫌だなって思ったからそう言ってるのに、なんでこんなに喜んでるんだろう。 「…………はい」 俺は頷きながら、「あ、そっか…」とさっきの怒り心頭だった聖南を思い出す。 これが聖南の気持ちだったんだ。 聖南の場合は、俺があまりに不安を煽るような事を自覚がないまま知らない間にやっちゃってたから余計にイライラしたはずだ。 なんでこんな事でそんなに怒るんだ!って言い返してやりたいと思ってたけど、それは違った。 心配と不安が入り混じり、例えようのない怒りが聖南の中で止めどなく湧いてたんだ。 ヤキモチ焼かれるのは嫌じゃない。 けど、焼く方はすごく嫌な気分だ。 「……………か…かわいーっ♡」 聖南に悪い事したなぁって思った矢先、目の前で甘えた声で感極まる恋人はこれでもかというほど奥を貫いてきた。 「うっ…んんん……っ痛っ……聖南さん、痛い…っ!」 グリグリっと奥を擦られ、おまけに大興奮の聖南は俺の骨が折れてしまいそうなくらい強く抱き締めてきた。 悪い事したなぁっていうの、前言撤回したい、かも…。 「はーもう…最高。 葉璃、大好き」 「俺も……大好きです」 照れながらそう言うと、眼鏡の奥で瞳を細めて、とても嬉しそうに微笑んだ聖南は凄まじく綺麗だ。 休み無くガツガツ腰を振ってる獣のように暴れん坊な恋人は、三回目はコンドームを使わなかった。 俺がヤキモチ焼いたから、気にしてくれてるのかもしれない。 たまに小さな子どものようにタガが外れる聖南の広い背中をかき抱いて、俺ってば物凄く愛されてるなぁとしみじみ実感していた。

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