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こんなにも別れがツライなら、一緒に居なければ良かった。
聖南は人生で初めて泣いてしまいそうだった。
「もう帰んの? なんで? 一緒に居てくれるって言ったじゃん」
葉璃を自宅前まで送ってきて、車を降りようとドアに手を掛ける度に、聖南はその手を取って行かせまいと握る。
それは一生の別れのように切なげな表情を浮かべていて、ひたすら葉璃を困らせていた。
「聖南さん、その台詞もう何度目ですか…」
夕方から夜へと辺りの景色が変わっているが、聖南にはもう葉璃しか見えていなかった。
葉璃の家族の手前、三が日からは帰してやらないと、と頭では分かっている聖南も、ここ何日かずっと一緒に居たせいで葉璃と別れる事が嫌で嫌でしょうがないのだ。
「分かんね。 だって寂しいじゃん……葉璃は寂しくねぇの? 俺マジで泣きそーなのに…」
「泣かないで下さいよ! ここにこうしてもう一時間ですよ。 俺も寂しいけど、ずっと会えないわけじゃないですから!」
握ってくる聖南の手の甲をさすってやり、やんわり退けた葉璃は再びドアに手を掛けた。
葉璃も寂しいのは山々だけれど、帰る帰らないの押し問答で時間を費やすのは、キュン♡となるよりも正直、めんどくさかった。
どうせ、帰らなければならないのだから。
一緒に居れば居る分だけ、後々恋しくなるのは目に見えている。
だからあっさり車から降りて少し時間が経ってから電話でもすればいいのに、ここにいつまでもこうしていたら余計に後から寂しさが募るという事を、聖南は全く気付けないでいた。
「潔いんだよなー、こういう時の葉璃クン。 次いつ会えそう? 泊まれる日分かったら連絡して、っつーか毎日連絡して」
「分かりました。 …聖南さん、俺言ったでしょ? 聖南さんから離れないって。 心はいつでも一緒です」
「心はいつでも……。 体も一緒がいんだけど…」
「もうっ、埒あかない! 俺帰りますからね、聖南さん、お家着いたら連絡してくださいね」
「あっ……葉璃…」
バタンッと無情な音を立てたドアの向こうで、葉璃がニコッと笑顔を見せてくれているが、聖南には笑い返す気力などない。
助手席側の窓を開けて、「俺も葉璃ママ達に新年の挨拶行ったがいい?」と往生際が悪い発言をすると、葉璃は笑顔のまま、口元に両手の人差し指でバツを作って見せた。
結構です、という意味だったらしい。
「聖南さん、気を付けて」
潔いというより、追い返されているようにも感じたが、寂しさをより軽いものとするために葉璃は無理をしているんだと良い方に考えて、聖南は呟いた。
「………そんな葉璃も好き。 じゃな、連絡するわ」
「はい、またね、聖南さん」
運転のために眼鏡を掛けた聖南は、後ろ髪を存分に引かれながらその場を後にした。
葉璃の自宅前に到着してから、一時間半後の事だった。
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