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「まだ四ヶ月なんだよな、知り合ってから。 なのに、俺のすげぇ暗くて痛いとこ話しちまって、悪かったと思ってる。 戸惑うのは当然だと思う」
「……何……?」
「あーごめん。 飛んでた?」
………飛んでた。
体中、汗と唾液でベッタベタで、互いの精液に至ってはパリパリに乾燥し始めてる。
手足の指先を動かすのも嫌だと思うほど疲労困憊だった。
遠退く意識の中で、そんな俺のベタベタの体にくっついて離れない聖南が謝ってきたけど、もう何がなんだか。
窓の外はすっかり明るくなってて、時計を見るのが怖い。
「葉璃は離れて行かない? ずっと一緒に居てくれるよな?」
「…………………………」
「ちょっ、何でそこで黙んの? 嫌だからな、急に変な事聞かされんの」
違う、黙りたくて黙ってるんじゃない。
疲れたんだってば。
俺は目に見えて焦り始めた聖南の髪を撫でて、視線を合わせて微笑んだ。
暗くて痛い聖南の過去なんて、俺が今からいくらでも上書きしてあげる。
聖南が、俺のどうしようもなくつまんなかった毎日を何気ない日々に上書きしてくれたように、俺も同じだけ、何でもないただの過去だったって思えるようにこれからずっと一緒にいてあげる。
離れていても安心させてあげられるくらい、聖南しか見えてないよって毎日言ってあげる。
そう思ってて口にも出したいのに、喉がガサガサで声すら出ない今どうやって気持ちを伝えてあげたらいいんだ。
「…………声、でない」
「……マジか。 ずっと可愛く啼いてたもんな。 なら、しょうがねぇ」
「………スマホ、取って」
なんで、という顔を見せながらもベッドから降りて俺のコートからスマホを持ってきた聖南は、さっきのようにまたピタリとくっついた。
俺はスマホのメモ画面を開いて、いま思ってた事を長々と書き込んで聖南に見せる。
読み終わった聖南から、ぎゅぅぅ、と押しつぶされんばかりに抱き締められてちょっと苦しかった。
「…葉璃を好きになって良かった。 葉璃に一目惚れしたの、運命…いや、必然だったんだな」
「…………!」
ーーー同じ事を、春香も言ってた。
俺と聖南がこうなるのは、必然だったんだって。
必ずそうなること。それよりほかになりようのないこと。
俺があの日、いきなり春香の影武者をする事になったのも、同じ番組にCROWNのセナが居た事も、……一目惚れされた事も。
それはすべてこうなる事への導き…偶然の重なりと運命によって、必然的に俺達は恋人同士になった。
必然、の意味を調べてそんな事を回想し部屋のベッドで猛烈に照れたのを思い出して、聖南も同じ気持ちだと分かった今、全部が一つに収まった気がした。
こうなるよりほかに、なりようがない。
互いが絶対的な存在なんだって事を聖南の口から言ってもらえると、俺の何もかもを聖南に捧げたい、隣を歩んで生きたい、心からそう思った。
体中がベタベタのギシギシでも、きっとそれは愛の証だと聖南は笑うんだろう。
聖南が言ってたように、この日は何年経っても忘れられない大切な記憶の一部となりそうだった。
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