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36❥ 4P

36❥ 4P 数日後、雑誌のモデル撮影に、珍しく聖南単体の仕事にも関わらず成田が同行している。 アキラとケイタはそれぞれ舞台公演が始まり、各々の活動で二ヶ月はつぶれてしまうがその間のCROWNとしての仕事は毎週欠かさずあるので、まさにCROWNはノンストップだった。 「また麗々とか。 このカップル撮影のカップル解消は俺権限で決めらんないのかね」 この日は再来月号の撮影で初春コーデを撮る予定なのだが、またしても麗々の名前を発見してゲッとなった。 以前の撮影終わりに2日連続で欲望丸出しで飲みに誘われた事を思い出すと、乗り気になどなれない。 鏡越しに、お馴染みのアカリとサオリは聖南にメイクとヘアを施しながら笑顔で答えた。 「無理でしょうね、評判いいんで…」 「セナさん復帰の先月号、売り上げ20万部超えらしいですね! おめでとうございます!」 「おー、そんないった? それなら余計解消できねぇじゃん」 編集担当が「目標は30万部!」と意気込んでいたが、10万部も厳しいのではと案じていた聖南も、好調な売れ行きに良し悪しを感じた。 何気なく資料に目を通していると、今日は半裸シーンがあると知って再度ゲッとなった。 「ちょっ、今日半裸あんじゃん! 傷どうすんの」 「あ、それ、もし良ければ見せてもらえませんか? 恐らく逆位置からの撮りになると思いますけど、隠せるものなら隠しますので」 アカリが神妙な面持ちでメイクする手を止めたので、聖南は立ち上がってシャツを捲った。 「いいけど。 ほら」 遠くでタブレットを扱っていた成田も加わって、三人で傷痕を食い入るように見てくる。 ヒヤリと外気が肌に刺さって寒い。 「わぁ、結構長いですね」 「ほんとだ! 地面と並行にいかれてますね…」 「でもここまで傷痕が綺麗なら、私が少し手を加えてあとは編集すれば確実に消せますよ!」 「そ? ならいい」 寒いとシャツの上から擦っていると、成田が今にも泣きそうな顔で聖南を見ている事に気付いて、腰掛けながら「なんだ、どうした」と声を掛けずにいられない。 「セナ…痛かっただろう…」 あの時、誰よりも一番長く病院で目覚めない聖南を見詰めていた成田は、回復している事に喜びを感じつつも腹部から背中へ長く伸びた傷痕に背筋が凍っているようだ。 「ちょっと痛かったけど大丈夫だって。 内臓は無傷だったんだし…っておい、泣くなよ?」 「泣いて、ないひ……」 「しょうがねぇな。 サオリ、ティッシュ渡してやって」 絶賛メイク中の聖南は動けないので、手が開いていたサオリに頼んだが、成田はグスグスと本格的に泣き始めて、ティッシュ箱を抱えてトイレへと駆けていった。 「成田さん、セナさんの事心配してたんですね〜」 「傷痕見たら生々しいですもんね」 「分かるけど泣くほどの事か…?」 泣くくらいなら見なければ良かったのに、と聖南は苦笑したが、成田にも相当に心配を掛けていたのだとそこでようやく知ってさらに苦笑を濃くした。 編集担当と打ち合わせも済ませ、アカリとサオリの見事な早業でモデルの聖南が完成した。 スタイリストから衣装を受け取って着ると、スタジオへと入っていく。 聖南はいつものようにスタッフ全員と挨拶を交わして立ち位置につくと、ほどなく麗々がやって来た。 「一ヶ月ぶりですね。 よろしくお願いします」 「おぅ、よろしくな」 今日も相変わらず意味深な視線を寄越してくる。 だが聖南は麗々の瞳を見ないように正面を向いたまま、カメラの前で表情を作っていった。 衣装を二度変えた後、最後の半裸シーンだ。 『際どいのあっからなー…』 こんな感じで、と編集担当から渡された資料には、二人がいかにもカップルの様にまどろむ様子が絵にしてあって、仕事だとはいえげんなりだった。 シャツを脱いで、綿生地のノータックの黒のチノパンのみでカメラの前に立つと、麗々は真っ赤なベビードール姿で現れた。 『なんだこれ、エロ本?』 ついにHottiはエロ路線にいくつもりなのかと疑ってしまうほどの衣装(下着?)で現れた麗々に、聖南は目を瞠った。 それをどう捉えたのか麗々はノリノリで、二人は意味ありげに絡まなければならなかった。 ソファで寛ぐ聖南の両腿の上に乗った麗々とのツーショットや、バックハグ、これだけでも聖南はくたびれてしょうがないのに、しまいにはキスシーンまで撮ろうとカメラマンが言い出した。 「口付けないでいいっしょ?」 「それは二人に任せるよ。 麗々の腰抱いて密着して、見詰め合って」 任せるって何だ、と聖南は怒鳴ろうかと思ったが、これまでの聖南のヤンチャを知るカメラマンだからこそ、任せると言ったのだろう。 きっとしちゃうんでしょうからそれ頂きます、と付け加えられたら、いよいよキレるかもしれなかった。 やれやれと聖南はため息を吐いて、腰を抱いて間近で麗々を見詰める。 今日初めて視線を合わせた気がした。 背の高い麗々がさらにヒールを履いているので、数センチ下に化粧の濃いその顔がある。 綺麗な顔立ちで、モデルとしての気品も漂う麗々は、そこら辺の読者モデルよりはるかに女性からの支持が高い。 昔の聖南ならもしかしたらお持ち帰りコースだったのかもしれないが、今は違う。 腰を抱いた違和感や、香水や化粧品の匂い、すぐ間近に迫る身長。 そのどれも葉璃とは真逆で、キスなどしたくもならない。 抱いている腰さえ葉璃とは違うと違和感を拭えなかった。 だが麗々は、聖南が腰を抱いている手にそっと自分のも重ねて、嬉々として微笑んできた。 「キスシーン…私は構わないですよ」 「俺が構うんだよ。 ギリギリで止めっから動くなよ」 「そんな事言わずに…♡ ……あれ、この肩の傷、どうされたんですか?」 「肩…?」 シャッターを切られ続けているのは分かっていたが、麗々に言われて気になり肩口を見ると小さく鬱血の痕があった。 『……葉璃だ。 そういえば、ホテルでヤッたあと葉璃がごめんなさいって言ってたの、これか』 ふっとその時の葉璃の姿が蘇り、聖南は優しく微笑んだ。

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