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39☆ 6・大塚事務所主催、仮装パーティー♡

☆ ☆ ☆  大塚芸能事務所は、所属するタレントがとても多いマンモス事務所だが、その中でも名の知れた飛び抜けての売れっ子は大御所を除いて一握りしか居ない。  今年一年、事務所に貢献したであろうその者達を集めて、決算月である三月に「お疲れ様でしたパーティー」が開かれるのが社の通例だった。  それらを企画運営するチームも存在するほどの力の入れようで、今年も例に漏れず "仮装" しての参加が義務付けられている。  その仮装も、自分たちでは決められない。参加者リストを見た社長が直々に仮装をあてがう。  それに合わせて衣装まで作られ、大きな事務所ならではのお金のかかった凝ったパーティーであった。  年末のパーティーと同じホテルの大広間を貸し切っているため、参加者達はそれぞれホテルの一室で着替えてからパーティーに参加する。  例に漏れずCROWNは事務所筆頭の稼ぎ頭なので、三人は別々の部屋で着替えを済ませてすでにロビーへと降り立っていた。 「お、セナは今年は海賊か」  セナは、背中までの長髪のウィッグに独特な形の黒の海賊帽を被り、左目には黒の眼帯、首元まで覆い被さる白いフリフリカッターシャツに、腰までの真っ赤なジャケット、ピタッとした黒のレザーパンツとロングブーツ姿で、見るからに海賊だった。  元々それが本業じゃないのかというほど似合っている。 「アキラは……アラジン?」 「違う。中東の民族衣装。そう言うケイタは……それ何? RPGの勇者っぽい」 「でしょ〜〜? 何か分かんないんだけど、この短剣がそれっぽいよね」  アキラは中東の王族を模した、カンドゥーラと呼ばれる民族衣装に似せたものを着用している。  頭には通常はロープ状のバンドなのだがアキラは金のスカーフを折り曲げてそれに見立てていてきらびやかだ。  片目が海賊眼帯で見えないセナが、ケイタの衣装を触りながら笑った。 「今年のこれはケイタのためにあるみたいに似合ってんな」  間違いなくケイタも男前なのだが、二十歳を迎えたばかりだからか表情や雰囲気にどことなくまだ幼稚さが残っている。  そんなケイタはよくあるRPGゲームの主人公のように短いマントをヒラヒラさせていて、おまけに何にも用途が無さそうな短剣を腰に差していた。 「俺も海賊が良かったー! セナの仮装って毎年かっこよくない!?」 「セナ去年なんだったっけ?」 「吸血鬼」 「ほら仮装パーティーの定番! なんで毎年俺はゲーム関連なんだよ? ゲーム好きでも何でもないのに!」  誰に何を着せるかは社長が決めているので、恐らくケイタはマスコット的扱いをされているのだろうと、アキラとセナは憤るケイタを前に二人で吹き出した。  パーティー会場は前回ほどごった返してはいないものの、約五十余名のタレントが仮装してその場にいる様は異様と言う他なかった。  三人が揃って会場へと入ると、同業者であるはずの者達から一斉に視線を浴びた。  やはり中央のセナの毎年の着こなしは半端ではなく、アキラとケイタよりも背が高い分、余計に目立っている。 「おぉ、今年もすごいっすね、セナさん!」 「海賊だー♡ 素敵ー♡」 「迫力すげぇぇ」 「なんだ? ケイタさんはまたゲームっすか?」 「アキラさんもとってもお似合いですね〜♡」  口々にそう言ってくるのは、今や第一線で活躍している女優や俳優達だ。  三人よりも年上の者ももちろんいるのだが、芸歴重視のこの世界ではセナ達の年齢ですら先輩として扱われる事がある。  アキラとケイタは声を掛けて来る者達へきちんと対応しているが、セナは我関せずで愛想笑いだけ浮かべてその場を乗り切ろうとしていた。  今日もアルコールは要らないとばかりに、しれっと輪から外れたセナは深い紫色のぶどうジュースを飲んで辺りを見回している。  ケイタはまだ様々にいじられまくっているので、アキラはそれを放ってセナに近付いた。 「まだ来てないんじゃない?」 「どうだろ。仮装してるだろうし、俺は片目見えねぇしでよく分かんねー」  今日は決算月のパーティーなのだが、夏にデビューを控えるハルと恭也もここへ招かれている事は分かっている。  ただ、当日予約されたホテルの部屋に入るまで各々はどんな仮装をするのか分からないため、セナはもちろんハルさえも知らないはずだった。  入り時間の問題で落ち合えなかったらしく、セナは右目だけを頼りにハル探しに精を出している。

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