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41★ 3・葉璃の周りは賑やかです。

41★ 3・葉璃の周りは賑やかです。 季節は春間近。 春休み真っ只中の俺と葉璃は、レッスンが終わって二人で駅へと歩いていた。 近頃のレッスンは、専らデビュー曲の振り付けを叩き込む事と、腹筋強化に努めている。 二人ともヘロヘロになりながらの帰り道だ。 「あの、さ…もし暇だったらでいいんだけど、明日付き合ってほしいとこあるんだ」 ホームの違う俺達はもうじき「バイバイ、また明日」って言い合うとこに来ていた。 葉璃が神妙な面持ちでそう言うから、何事かと思って立ち止まる。 「いいけど、どうしたの? 深刻そうに、してる」 「………病院に行きたくて」 「病院!? ど、どっか痛い? あ、成長痛の痛み止めのお薬、貰いに行く?」 「いや、その…成長痛の事だからいつもの病院、なんだけど……」 「うん…?」 病院に行くだなんて言うからどうしたのかと思って葉璃を見下ろすと、言いにくそうに言葉を詰まらせる葉璃は、ふと困った顔で俺を見上げてきた。 いつもの病院だろうがどこだろうが、葉璃が付き合ってって言うならどこにだって付き合う。 「あんまり痛み感じなくなってきたんだ」 「え? 足?」 「うん……っていうか薬飲むの忘れてても、大丈夫になってきてて」 「痛みがなくなってきたんなら、良かったね」 葉璃を苦しめていた遅めの成長痛は、だるさや痛みを感じる度にツラそうにしていたから、それは良い事なんじゃないかと言っても、そうは思ってなさそうだ。 しょんぼりしていて、あまり嬉しそうじゃない。 「…………俺、背伸びた?」 「……ど、どうだろう? ……俺はほぼ毎日会ってるから、伸びてても、分かんないかも」 「そっか…。 なんか、あれだけ痛かったわりには、あんまり伸びてる気がしないんだよね」 なるほど、葉璃はそれであまり嬉しそうじゃないのか。 痛みなんて感じない方が絶対に良いはずなのに、葉璃はその成長痛でもう少し背が伸びた手応えを感じたかったんだね。 だから可哀想にしょげている。 「恭也の方が伸びてない? 俺が少し伸びてたとしても、恭也が伸びたらデコボココンビのままじゃん…」 「いや…分かんないな。 明日、病院、付き合うから。 診察室も一緒に、入ってあげる。 先生に、聞いてみようね」 「うん。 ありがと。 一人で行くの心細くて」 人いっぱいだし、と付け加えた葉璃は、自身のヒザをトントン、と軽く叩いた。 少しでも背が伸びていますように、とおまじないでもかけているようなその行動に、目尻が下がる。 「セナさん、忙しいって?」 俺に付き添いを頼むくらいだから、セナさんは当然来れないんだろう。 「え、あー…うん。 今月CROWNの新曲出るから、そのための歌番組の収録とか雑誌の取材がたくさん入ってるみたい。 だからあんまり俺から連絡するの控えてる」 「…そうなんだ。 …明日葉璃のお家まで迎えに行くよ。 病院混むだろうから、少し早めに行くね」 「分かった、来る前電話してくれる? 起きられてるか心配だから」 「うん。 いいよ」 朝出掛けに葉璃へ連絡する事を約束して、俺達は別れた。 互いのホームに着いて葉璃の姿を探すと、葉璃も俺を探していて目が合い、バイバイと手を振り合った。 毎日のレッスンの締めくくりが、このバイバイでようやく終わる。

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