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「ふーん……それ最初に言っとけよ。驚くじゃん」 「言わなかったか?」 「聞いてねぇよ! てか俺がどうこう言う前に葉璃と恭也がどう思うかだろ。……おい、将来的にはそんな事になるらしいけど、お前らはそれでいいの? はいそうですかって素直に頷けないんじゃね?」  聖南は、俺と恭也の唖然とした姿を心配そうに見やってきて、二人とも「はぁ……」としか返事を返せない。  俺達の性格をよく知る聖南だから、こんなにも穏やかじゃないんだ。  だって。  俺と恭也が骨組みを作る……?  そしてその後新しい人を三名も受け入れる……?  急にそんな事を言われても、まだデビューすらしてないのにどう答えたらいいんだ。  しばらくテーブルを睨んで、俺はチラッと恭也を見た。  視線を感じた恭也も俺を見て、とにかくただただ見つめ合った。でも、今だけは見つめ合っててもお互いの気持ちがまったく読めない。  話が唐突過ぎて付いていけなくて、二人とも頭の中が真っ白だからだ。  そんな俺と恭也を見た社長は、お茶を一口飲んで説得めいたものを開始する。 「アイドルのグループは多かれ少なかれ人数が増えたり減ったりするだろう。それと同じだ。起爆剤としての役割で三名加入させても、それが花開かない場合もあると懸念はしている。だから逸材である二人がまずデビューして人気を不動のものにしてほしい。CROWNほどとは言わないから、とにかくやれるだけ頑張ってみてくれないか」 「……社長さぁ、マジでそんな大事な事は先に言えっつーの。なぁ?」 「は、はい……」 「驚きはしましたけど、何となく、そんな予感はしていました。本当に、薄っすらとした予感、でしたけど……」 「そうかそうか、それなら話は早いな。すまんな、てっきり話を通した気になっていたよ」  てへ、とでも言いそうな社長の屈託のない笑顔を見ていると、何だかもう悩むのも仕方ないかと思えてきた。  それはすでに決定事項で、俺と恭也が何と言おうと翻る事はないんだから、素直に従っておくしかない。  諦め、というよりも、前向きに捉えていくしかないって感じかな……。  今はデビューの事、CROWNのツアー同行の事で頭がいっぱいだから、正直三年も先の事なんて考えられるわけがなかった。 「とりあえずデビュー前にその話聞けて良かった。……と思うしかねぇな」  パイプ椅子の背凭れに体重をのせて苦笑する聖南の前で、社長の隣に座る俺達のプロデューサー二名も同じく苦笑していた。  黙って聞いていた彼等もまた、寝耳に水な話だったらしい。

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