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45♡ 6P

45♡ 6P ETOILE。 フランス語で、星の意。 綺麗な単語だと思った。 聖南の名前の漢字みたいに、この単語もキラキラっと輝いて見える。 外が暗くなってきたから、社長は俺達にお茶を振る舞って少し話をして立ち上がり、それが解散の合図となった。 「CROWNのツアー同行の準備は進んでいるか?」 「はい、頑張ってはいます、けど」 「CROWNのダンスは思ってた以上に難しいです。 もっとがんばります」 俺達も立ち上がって、正直に答えた。 ここで見栄を張っても仕方ないもんね。 「そうか。 CROWNもツアーのリハーサルが入り始めて余裕がないだろうが、空き時間にここへ来て教えてやれよ、セナ」 「おぅ、それは構わねぇよ」 聖南は悠然と微笑んで、俺達と一緒に会議室を出ようとまたサングラスを装置した。 気に入ってるのか、最近ずっとこのブルーレンズの細身のサングラスだ。 「それでは、お疲れ様でした」 「お疲れさまでした」 二人で社長にペコッとお辞儀をして、俺達は会議室を後にした。 「あ、セナ、お前は少し残ってくれ。 数分だ」 「あぁ、いいけど。 …葉璃、恭也、送るから下で待ってろ」 「………はい」 社長に引き留められた聖南にそう言われて、俺達は事務所一階のロビーで聖南を待った。 会議室から出る直前に聞こえてしまった社長の台詞に、俺はちょっとだけ心が揺れている。 『お前の親父さんとの会食なんだが、明日の18時に料亭さくらで……』 と、それは聖南の過去を知る俺にとっては聞き捨てならない台詞だった。 聖南と、お父さんが、…会食……? …………大丈夫なんだろうか。 どういう経緯での会食なのかは分からないけど、聖南がよくOKしたな。 お父さんはどこかの会社の偉い人だって言ってたから、その関係なのかもしれない。 でも聖南にとってのお父さんは、親なのに親じゃないっていう複雑な思いを抱えてるから、相当な覚悟を持って臨むに違いない。 明日、って言ってたっけ……。 元気付けてあげたいけど、聖南は俺にこの話はしなかったから隠しておきたいのかもしれない。 それなら、聖南が自分から話してくれるまで待つことにする。 俺が気安く首を突っ込んでいい話じゃないから、聖南が打ち明けてくれるまで、何も知らない顔をして黙っとこう。

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