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分かってた事だけど、三人の見えない絆は確かに強くそこにあって、今までの時間がみんなの頭の中で走馬灯のように駆けめぐってるみたいだ。
長い長い沈黙の後、聖南がフッと小さく笑った。
「……葉璃と出会えた事も、アキラとケイタとこうしてられんのも、父親と母親が俺を作ったからなんだよな」
「………………聖南さん…」
「今はまだ、父親を許すも許さねぇもない次元にいるけど、いつかは感謝する日が来んのかも。 俺生きてて良かったって今すでに思えてっし」
再び箸を持って料理を食べ始めた聖南を、アキラさんとケイタさんは複雑な表情で見詰めている。
聖南の葛藤が手に取るように分かるから、二人もどんな言葉を言うのが正解なのか、分かりかねてるみたいだった。
だけどアキラさんとケイタさんは、少しだけ間を置いて同時に箸を取り、何気なく食事を始めた。
「セナは今まで通りでいいんじゃないの。 親父さんとの事で悩むなんて、いつもの事じゃん」
「感謝するもしないも、その前にセナと親父さんの間にそこまでの思い出がねーから悩んだって一緒だと思う」
「そーなんだよ。 葉璃が全部俺の気持ち言ってくれて超ーースッキリしてるし、今はそれで十分っつーか。 これきっかけで父親と何がどう変わるとかもねぇじゃん? ゼロにゼロ掛けたって一緒だよな」
「それをハルが気付かせてくれたって事だな」
「あ〜〜ハル君の激怒見たかったなぁ〜」
「すげかったよ。 キレてる時の顔は俺も見れなかったけどな。 可愛く怒鳴ってた。 なっ?」
あれ、何でまた俺が怒鳴った話に戻ってんの…?
すごくいい感じで三人の絆を見られてホロッときてたっていうのに、聖南が俺を見て同意を求めてきた。
「何度も言いますけど、怒鳴ってないですってば!」
「分かったから。 怒鳴ってはないけどブチ切れたんだよな? ハル君」
ケイタさんに笑顔でそう言われて、だーかーらー、違いますって!と俺は心の中でだけ否定して、もう口には出さなかった。
すっかり食事が止まってしまった俺に、聖南が箸を持たせてくれる。
何だかいつも以上に甲斐甲斐しい聖南に困惑していると、アキラさんからふいに見詰められた。
「……ハル。 セナを頼むな。 でも、ちょっとでも嫌な事されたらすぐ相談に来いよ。 ぶん殴ってやるから」
「俺が葉璃に嫌な事なんかしねぇよ」
「分かんねぇじゃん。 セナすぐに盛るし」
「それは嫌がってねぇはず。 ………あ? 葉璃、嫌がってんの?」
自信満々だった聖南が箸を止めて俺を凝視してきた。
さっきアキラさんと俺が一緒に居たのを知ってるからか、疑いの目で見てきて怖いんだけど…。
俺がアキラさんに何かそれらしい事を打ち明けたとでも思ってるのかな。
「嫌がってないですって。 ……長いのは勘弁してほしいけど…」
俺はきのこの炊き込みご飯を茶碗によそいながら苦笑して、最後の台詞は二人には聞こえないようにちっちゃく呟いたはずなのに、目の前のケイタさんが地獄耳だった。
「長い? 何が?」
「あ、い、いや……何でも……」
「あー、葉璃いつも文句言ってるよな。 んな長いか?」
「だから長いって何が?」
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