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聖南は本当におまけの一回を仕掛けてきた。
中出ししたり外出ししたりで体中気持ち悪くて、でも長い行為の影響でバスルームにも歩けないって言うと、いつものように抱っこして連れて行ってくれた。
俺は不安を抱えててもいい、それでも聖南は好きでいてくれる、そう思えてから驚くほど心が軽くなった。
今に始まった事じゃないだろ、なんて笑う聖南は終始ご機嫌で、念入りにくまなく体を洗ってくれて。
俺の性格を俺より分かってくれて、理解してくれて、そしてそれごと愛してやる、なんて言われたら…ときめいちゃうだろ。
だから、全然寝てないのにこんなに長くエッチしてても、疲れたって口には出さなかった。
俺もだけど、聖南もすごくすごくすごく不安だったんだって分かったから。
離れる、別れる、…そんな言葉、聖南に聞かせたらいけない。
ただでさえお父さんとの事で不安定な聖南だったのに、その翌日に俺が逃げるなんてほんとにどうかしてた。
思いのままに突っ走った結果が、ひどい有様だ。
でも、聖南とより分かり合えた気がする。
どこまでも甘やかす聖南にどっぷりハマってた俺に、皮肉にも俺のぐるぐるが地を踏ませてくれた。
聖南の言う通り、俺の卑屈さネガティブさは今に始まった事じゃなくて、多少改善されたと言っても僅かな不安でまたぶり返すほど根は深い。
それも分かった上で、聖南がくれたたくさんの愛の言葉。
それが自信に繋がるほど俺もまだ成長しきれてはいないけど……聖南から離れないって気持ちはもう二度と揺るがない。
『葉璃と離れる事が一番傷付く』
そう言ってくれて、ハッとした。
想い合ってるからこそ、お互いどちらかが欠けると腑抜けになる。
俺は聖南のために離れる事が一番の解決策だって思い込んでた。
……そうじゃなかった。
昨日の騒動で俺よりも聖南の方が傷付いてたのかもしれないって気付いてまで、離れようなんて思うはずがない。
大好きで尊敬する聖南と一緒に居られるなら、俺はもう逃げないって決めた。
気持ち晴れ晴れとしておぼつかない足取りでベッドルームへ戻ると、一足先に戻っていた聖南が半裸でシーツを交換していた。
「そういえばいっつも聖南さんが替えてるよね、次から俺がするから」
行為のあと少しだけ居ないと思ったら必ず聖南がシーツ交換をしていて、毎回申し訳ないからって手伝おうとしても「葉璃は座ってろ」とベッドルームから追い出されて終わる。
「セックスの後のこれ好きなんだよ。 替えながら、どんだけ愛し合ったか思い出してんの」
「えぇ!? ……聖南さん、そんな性癖も…」
「だから性癖じゃねぇし! あ、葉璃、動けんなら悪いけどスマホ持ってきてくんない? リビングにあるから」
「うん、分かった」
ヨタヨタと歩いてリビングに向かい、テーブルに置かれたスマホを持って聖南の元へ戻る。
ついでに冷蔵庫からお水を持ってきた。
「お、サンキュ。 葉璃おいで、このまま寝よ」
聖南はすでにベッドの中に居て、薄手のふわふわ毛布を上げて俺の場所をトントンと叩いて呼んだ。
相変わらず甘やかすなぁ、と思いながら隣に滑り込むと、聖南が受け取ったスマホから早くもどこかへ掛け始めた。
「成田さん? 今日仕事何時からだっけ」
『おはよう、セナ。 今日はN局14時集合、15時収録開始の18時終了、19時からスタジオ入ってツアーリハ』
「りょーかい」
『葉璃君の事聞いたぞ? 大丈夫か?』
電話の相手の成田さんが俺の名前を出したのが聞こえてビクッとすると、聖南が視線をくれて優しく背中を擦ってくれた。
…………こういうとこ、好きだな…。
「おぅ、もう大丈夫。 社長にも背中押されたから今後は遠慮ナシでいくわ」
『いや頼むから目の前でイチャイチャすんのはやめてくれ! 俺長い事独り身なのに見せ付ける真似はするなよ~!』
「イチャイチャしてるつもりはねぇけど。 じゃ、局でな」
聖南は、「二時間だけ寝よ」と独り言を言ってアラームをセットしたスマホを枕元に置いた。
「二時間だけ? まだ8時だからもう少し寝れるよ? 聖南さんも寝てないでしょ?」
「あんま寝ると午後の仕事しんどくなるからな。 あと曲作んないといけねぇ」
「曲を?」
「そう。 誰かに提供するらしい」
昨日帰ってきてから、詞が降りてきたって慌てていつもの部屋に走り込んで行ったのを思い出した。
CROWNの新曲かな、と思ったら違うみたいだ。
「誰かって……まだ決まってないって事?」
「俺もよく分かんねぇんだよ。 ツアー終わりにプロデュース業にも力入れてくれねぇかって言われたから、俺来年からそっちに本腰入れなきゃなんねぇかも」
「そうなんだ。 …でも聖南さん、ミュージカルの話きてたよね?」
「あぁっ、忘れてたな。 週末時間取れそうなら本見てみっかなぁ。 恭也が何か言ってたし」
苦笑する聖南は、今年から来年にかけてもまだまだ忙しい日々を送る事になりそうだ。
どんな曲を作ってるんだろう、と想像してると瞼が重くなって、聖南がいつもしてくる背中のトントンも相まって俺はものの何秒かで深い眠りについていた。
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