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 意地悪な聖南の笑みにも、客席からは黄色い悲鳴が飛んでくる。  テレビだろうがラジオだろうが、聖南は一切妥協せず素のままを出すので、それを知るファン達は非常に面白がってステージとモニターに注目していた。 『なんでだよ! 放送始まってまだ十分も経ってないのに!』 『あんまり俺イジるから仕返し』 『せめてあと三十分時間ほしい!』 『しょうがねぇなぁ、ケイタのプレゼントはTシャツとそのゴツいバックルで勘弁してやろう』 『うぉぉ俺はバックルもかぁ! いいけど!』 『今日プレゼント大会やったら全部の日程でやらなきゃなんなくなるけどいいのか?』 『いい、いい。俺が取り締まってんだから俺が責任取る』 『警棒見えたね』 『遅刻の多い警備員さん、だろ』 『だーかーらー、俺は遅刻しねぇっての!』  ここまでの三人のオープニングトークが長くなってしまい、下方のスタッフと舞台袖のスタッフ両方から巻きの合図がきてしまった。  この異例とも言える環境下での生放送に、聖南はもちろんアキラとケイタも思わず時間を忘れて話してしまうほど楽しくて仕方ないようだ。  客席からのリアルな反応が返ってくるのがなかなかに新鮮で、合間合間でCROWNの曲を流しながらハガキとメッセージを二人が交互に読んでいく。  それに対し、聖南がタイムキーパーを兼ねて調整しつつ話を広げていくいつものスタイルに戻った事で、巻き指示以降はスムーズに進行していった。 『よーし、じゃあプレゼント大会やるか~』 『もうそんな時間!?』 『楽しい時間はあっという間だよなー。ケイタ、自己紹介考えた?』 『いや全然!』 『何やってんだよ、終了まであと二十分しかないぞ』 『万が一思い付かなくてもセナ兄貴とアキラ兄貴が助けてくれるだろ?』 『今まで一回も兄貴なんて呼んだ事ねぇじゃん!』 『ウケる……! セナ兄貴だって……!』  珍しくアキラが爆笑する中、客席からもとめどなく笑いが生まれている。  聖南の告知通り、チケット番号による即席の抽選会が行われ、まるでリスナーもこの場に居るような錯覚を覚えるほどの盛り上がりを見せた。 『当たった三名おめでとー! スタッフが名前聞きに行くから、名前伝えといてな~』 『サインして渡すからな。偽名でもあだ名でもいいけど思い出にしたいなら本名伝えとけよ』 『出た、俺様。それだからセナはアキラ推しのファンから鞍替えしてもらえないんだよ』 『アキラもだいぶ俺様じゃね?』 『いいや、アキラはお兄様って感じ。セナはそうだなぁ……』 『遅刻魔の警備員さん(小声)』 『おいアキラ! いま何か言ったろ!』 『リスナーには聞こえたと思う』  マイクに向かってボソッと呟いたアキラの発言に、リスナーから続々と生の声が届いた。  聞き捨てならないと憤慨していた聖南が時計をチラと見ると、そろそろ締めなければならない時間だ。  アキラとケイタが警備員ネタでまだ笑っている最中、水で喉を潤した聖南はほんの数秒沈黙した。  この公開生放送は、今まで躊躇していたリスナーがいつかCROWNのライブに足を運んでみようかなと思わせるには充分で、それはCROWNを間近で感じてみたいとのファン心理を付く、聖南の巧みな賭けでもあった。  プレゼント大会は予定外ではあったが、ラジオの公開生放送に関してはファン、CROWN関係者、そして事務所すべてにとってプラスになると期待していた。  ツアー関係者、ラジオスタッフですらあまり試みた事のない発案にも関わらず、聖南に不安はあまり無くむしろ成功する気しかしない。  目の前に広がるファン達の笑顔と、現在聴いてくれているリスナーの反応だけでも、これまでもこれからもCROWNを多大に支えてくれると実感出来た。  もう後ろは振り返らない。  誰にも口出しさせない。  自らのスキャンダルによってCROWNの存亡までも危うかったあの時から考えれば、その必要が無くなったと言って良かった。  前を向いてひたすら走り続け、アキラとケイタの背中を押す事はもちろん、葉璃と恭也を最大限にバックアップしていきたい。  傷を負い、事務所幹部から冷淡な瞳を向けられてしまったあの自業自得の屈辱的な日から、どれほどこのツアーの日を夢見た事か。  この会場中の笑顔を体感出来る幸せを、これ以上ないほど噛み締めて聖南はフッと勝者の笑みを浮かべた。 『それ引っ張るなよ。俺 遅刻魔じゃねぇから。……ん? 何、メッセージ?』 『あと十分もないけど……』  下方のスタッフから突然『ケイタ︰メッセージ読み上げ』とカンペがきた。  聖南がそろそろ締めようと台本を閉じたところだったので、急いでケイタがパソコンのメッセージを開く。  これはラジオスタッフによる遠隔指示のようだった。 『あ~これかぁ。……ラジオネーム三日月さん、ありがとうございまーす。……来月CROWNの後輩ユニットがデビューされるそうですが、情報が全然回ってきません。本当にデビューするんですか? ……だそうです』

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