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60♡ 6P
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今朝の自慰が後ろめたくて、しかも何故か俺を抱かなかった聖南に会う勇気も無くて、久しぶりにスマホの電源を落とした。
今日は控え室行ってもいいよって成田さんに言われたけど、俺は頑なに拒否して、昼食と本番前も会いに行かなかった。
いや、行けなかった。
切ない気持ちと恥ずかしい気持ちで心が忙しくて、重要なライブの本番前に俺のぐるぐるで聖南を煩わせたくもなかったんだ。
通しリハーサルの見学中、聖南から鋭い視線がビシビシきてたけど、話し掛けられないようにちょこまかと移動して恭也を盾にもさせてもらった。
この広い会場は今日も絶賛満員御礼で、大歓声の中、聖南も昨日の倍は動き回っている。
アキラさんとケイタさんとの絶妙な掛け合いも健在で、ファンは黄色い悲鳴をひっきりなしに上げて会場を盛り上げていた。
人数が多い分、それはそれは凄まじい歓声だ。
俺と恭也は、今日は主役のCROWNよりもダンサーのお兄さん達の動きに注目して観ている。
端に立つ自分の姿をイメージしながら、俺達が踊る曲を口ずさみつつ手元だけ振付を真似してイメトレに専念した。
初舞台はこの会場の三倍の収容人数らしいから緊張するなって方が無理だけど、そうも言ってられない。
真っ黒に染まったスケジュール帳の写メが脳裏によぎって、今は聖南とのエッチ云々よりイメトレが優先だって珍しく俺は前向きだった。
恒例のプレゼント大会が相当な盛り上がりを見せ、また少し終了時間がおしてしまってスタッフさんはバタついてはいたけど。
半裸の聖南達がアンコール二曲を歌い上げると、大きく一礼してステージを捌けて行った。
『三日連チャンで言うけど、出待ちしてたら怒るからな! 速やかに帰るんだぞ!』
捌けたはずの聖南が姿を見せないままマイク伝いにそう言うと、会場から一斉に「はーい!♡」と返事が巻き起こる。
落とされていた照明が明るくなり、CROWNの世界から一気に現実へと引き戻されたファン達は口々に感想を言い合いながらアリーナ会場を後にしていた。
俺もまだどこか夢うつつで、興奮気味な彼女達の気持ちに寄り添う。
大音響で歌って踊る三人とバックダンサーのお兄さん達は、誰が見ても眩しく輝いていて、ほんとに現実を忘れさせてくれた。
トータルすると、ほんの三時間。
だがその三時間は、CROWNという幻のように大きな光に満ち溢れていた。
スタッフさんの迅速な誘導で、ほとんどの観客が居なくなった客席は、物悲しささえ誘う。
「……うん。 今日も、素晴らしかったね」
控え室へと戻りがてら、恭也も興奮が覚めないのか僅かに声が明るい。
さすがに打ち上げは参加しないといけないから、何食わぬ顔して聖南と会う別の「覚悟」をしなくちゃ。
本日のCROWNのライブ成功を労い合う周囲の賑やかな大人達から外れた場所で、俺と恭也は向き合った。
「そうだね…。 昨日も思ったんだけど、ライブの後のステージってなんであんなに寂しそうに見えるんだろ」
「主役が居なくなったから、じゃない? 主役を輝かせるために、あるんだから」
「主役を輝かせるため……」
「俺達も、あそこに立つんだよ。 葉璃、実感、湧いてきた?」
「え? ……うーん…実感とは少し違うかな…。 イメトレはしてみたけど、俺があそこに居る想像は全然出来なかった」
「葉璃は、本番に強いから、羨ましい。 俺も想像なんて、出来なかったよ。 でも、やらなきゃ。 必要としてくれる人が、一人でもいる限り、ね」
「そう、だね…。 俺達はもう、ETOILEなんだもん」
恭也がいつになく俺を奮い立たせてくれる。
CROWNのライブの様子や観客のレスポンス、ステージでの動き方、この規模の会場での音の反響具合、それらを実際に体感出来ただけでも貴重な経験だった。
映像ではこの感覚はとても味わえない。
聖南が俺と恭也を呼んだのは、経験はおろか想像も出来ないほど大きな会場でのライブを、肌で感じてほしいと思ったから…なんじゃないかな。
俺には『愛し合う覚悟して来い』なんてカッコつけてたけど、……そんな気がした。
「ちょっとトイレ行ってくるね」
「あ、俺も行こうか?」
「大丈夫。 すぐそこだったから」
心配そうな恭也にマスク越しだけど笑んでみせて、俺はライブ中ずっと我慢してたトイレに行こうと控え室を出た。
素晴らしいライブの真っ最中に席を立つなんて考えられなくて、ちゃんと始まる前も行ったはずなのに、恥ずかしいけど終盤から漏れそうだった。
急ぎ足で数メートル先のトイレを目指す。
男性マークへ向かって一目散だったから、空室であるはずの扉からニュッと出て来た腕に俺は気が付かなかった。
その手からグッと腕を握られて、一瞬で部屋へと連れ込まれる。
「うわっっ!?」
な、なんだーーー!?
視界が一気に変わって瞬きを繰り返す。
あー分かった! 聖南さんだ!
すぐに悟った。
こんな事が何度もあった経験から、最初こそ驚きはしてもやけに冷静でいられた。
「もう、聖南さんでしょ? ほんとにこういう趣味あるんじゃ………なっ!!!?」
俺を空き部屋へと連れ込む常習犯である聖南だと確信して振り向くと、そこにはーーー。
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