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Ⅴ ーー七月二十九日ーー※
〜その晩〜⑤
昨日禁欲をさせてしまったからか、いつの間にか眼鏡を掛けている聖南の目がいつも以上にギラついていて怖い。
飲み掛けの紅茶に後ろ髪を引かれていた葉璃は、問答無用で聖南にベッドまで運ばれ、早速組み敷かれている。
移動の合間もずっと乳首を舐められていて、性急過ぎる前戯に戸惑いと照れを隠せなかった。
「んっ……せな、さんっ……」
「………………」
名前を呼んでも返事をしてくれないほど、夢中で乳首を舐めている。
右にいったり左にいったりでじわじわと襲ってくる快感が、少しずつ葉璃の声を甘くさせていった。
舐めたり食んだりする、ぴちゃぴちゃという音が耳に入ってきて、裸に剥かれながらも思わず耳を塞いでしまう。
聖南が左の脇腹からお尻辺りを撫で回してくるものいけない。
大きくて温かな掌が体を這い回る事で、葉璃をいつものように欲してくれているのが分かって、だんだん恥ずかしさも薄れてくる。
聖南のせいだと言い訳をしていると、もっといい。
「俺イジった罰として、今日はずっと前からやりたかった事やる。葉璃ちゃん我慢してな?」
両方の乳首を堪能したらしい聖南が、欲に濡れた表情で葉璃に顔を寄せ、キスを求めてくる。
だが何やら罰があるらしいと聞くと黙っていられず、聖南の両頬を取って拒んだ。
「えぇ……っ? い、嫌だ!」
「嫌だじゃねぇよ。まだ何やるかも言ってねぇじゃん」
「嫌だよっ! なんで罰なんて……!」
「葉璃、舌」
「んむーっ……!!」
取り付く島が無かった。
反論空しく、聖南は強引に葉璃の口元を舐めて開かせると、そのまま舌を差し込んで目一杯口腔内を弄んだ。
何度も角度を変えてのキスは唾液の交換も当然あって、慣れてきたと思っていても毎回溺れそうになる。
聖南の唾液を飲み干してゆっくり瞳を開くと、二重の瞳を細めた獣がジッと葉璃を見ていた。
「かわい。……飲んだ?」
「……うん」
「葉璃のもちょうだい」
「んんむっ……っっ!!」
そんなに根こそぎ唾液を持っていかないで。
葉璃が瞳を見開いて聖南に非難を訴えても、ギラギラした獣にはまったく届かない。
やはり禁欲後の聖南は危なかった。
「風呂入っといて良かったなぁ。じゃあ葉璃ちゃん、さっそく舐めさせて」
「ふはっ……、えっ? やだ、やだよっ」
「前じゃねぇ。う、し、ろ♡」
「えぇ!? やだ、前からそれだけは嫌だって言って……うわっ」
今日の聖南は葉璃の「嫌だ」は聞いてくれないつもりらしく、ころんと葉璃を反転させた聖南が早くも下着を下げてきた。
「うまそーっ」
逃げ腰を掴まれて枕に顔を埋めた葉璃は、両手でもちもちの臀部を掴み、孔を顕にするべくグイと開いた聖南を恨みがましく睨んだ。
そんなところを舐めたいだなんて、どうかしている。
美味そうだなんて、絶対嘘だ。
葉璃は何度も聖南の手を払い除けようとしたのだが、興奮しまくった聖南に優しく「コラ」と窘められてむくれるしかなかった。
「んっ……ちょ、ほんとに……っ、やめて……」
ぎゅっと瞳を瞑り、葉璃が覚悟を決めた瞬間──ペロっとまずはひと舐めされた。
不快感と、言い様のないゾワゾワとした感覚が背中をしならせる。
濡らすためもあるのか、唾液を多く注がれている気がして、またもぴちゃぴちゃという粘膜音が葉璃の耳を犯していた。
「んー? やめねぇよー?」
「……っ……聖南、さん……っ、ダメ、あんまり……見ないで……っ」
「そう言われてもなぁ……葉璃、腰揺れてるけど」
「嫌だから、逃げてるの……!」
「あぁ、分かった。物足りねぇのか。待って、ナカ掻き回してやる」
「違っ……そんな事言ってな……っ……あっ……やっ……」
ジロジロ見るのも、孔の中に舌を入れられてグリグリされるのも、どっちもやめてほしいという意味で言ったのに、だ。
ローションで濡らした指をぐちゅっと穴に突き入れられて、同時に舌も入ってきている。
聖南の中指が葉璃の中を蠢き始めて、腰が揺れるのを止められない。
気持ちいいけれど、聖南のギラつく視線、いやらしく蠢く指、卑猥な舌が葉璃をとてつもない羞恥に追いやる。
「葉璃ちゃんは欲張りだなぁ」
「聖南さん……っ! ……あぁっ、やめっ、……ベロ、熱い……!」
「やめてっつーわりには気持ち良さそうじゃん。この先走り……舐めてぇ……」
「ちょっ……せな、せなさん……っ?」
中をぐちゅぐちゅ掻き回されながら、上げさせられた腰の下を覗き込む聖南がいやらしい。
葉璃が流せない涙の代わりに、性器からはすでにポロポロと透明な液体がシーツに溢れ落ちていた。
それを舐めたいと言い出した聖南の行動は早く、二本の指を入れたまま葉璃の体を反転させ、泣いている性器を素早く口に含む。
「わっ……待って、待っ……あぁっ、も、ダメ、せなさんっ……ダメ、すぐ出ちゃうから……ぁっ」
中を蠢く聖南の指先が、前立腺を捉えた。
グリ、グリ、と最初は強く何度か押す程度だったのが、葉璃の絶頂が近いと分かるや激しく指を出し入れして擦り始めた。
一方の左手は葉璃の性器を上下に扱き、亀頭を含む聖南の口元は唾液と先走りで艶めいている。
「あ、もぅっ、ダメっ、せなさんっ……やぁっ──!」
こんなに一緒くたに追い立てられたのは初めてだった。
射精したものをゴク、と飲み干す音が聞こえても、葉璃の目の前はチカチカするどころか真っ暗だ。
いつもはお星様が舞って、目の前がチカチカキラキラしているのに──強過ぎる刺激に、なかなか瞳を開ける事が出来なかった。
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