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ⅩⅤ ── 十二月某日 ──
15♡〜赤面な打ち上げ〜②
「ほんとだ、メロメロなってる! そういえばさっき、セナの事「王子様みたい」って言ってたよな」
「王子様? マジで? 葉璃、俺カッコ良かった?」
「…………………」
ケイタさんまでそんな事……!
やだやだ、聖南が顔を覗き込んでくるっ。
とてもじゃないけど直視できないよ〜〜!
「今時こんな分かりやすく照れる子いるのか……」
「いいなぁ、セナ! やっぱセナにはハル君みたいに純情な子は勿体ない〜」
「葉璃、顔が真っ赤、だよ…」
三人で口々に冷やかしに似た言葉を掛けてくる。
恭也にまで斜め向かいの席から「ふふっ」って笑われるし、そんな顔赤いのかと思って自分のほっぺたを手のひらで触ってみた。
───熱い。
「これ照れてんのか。 そっかそっか、それなら感想は聞かなくても分かるからいいや」
「何でそんな照れんの? いつものセナじゃん」
「アキラ、ハル君の中では何かが違うんじゃない?」
「舞台立ってたからか? まぁセナの踊りと歌に酔うのは分かんなくもないけど」
そんな事を深堀りしてどうするの…っ。
みんなで「いただきます」をして料理を食べ始めてるけど、俺は一向に箸が進まない。
だって聖南がジーッと俺を見てくる。
王子聖南からめちゃくちゃ視線感じるんだよ〜っ。
「い、いえ……それもあります、けど……」
「葉璃、何か言ったか?」
「なになに?」
「………聖南さん……金髪……」
「金髪?」
え、え、……なんでみんな一斉に箸を止めるの。
俺おかしな事言った、のかな。
緊張する理由と言えば、これしかないんだけど…。
「俺の金髪がカッコ良過ぎて照れてんの?」
「……………………」
視線を合わせようと聖南から顎を取られて、今日初めてまともに聖南と目が合った。
あーもう……っ、カッコいい…!
「眼鏡掛けてねぇのに目が♡になってんな」
「なんだよ、それ」
「セナの眼鏡姿なんて見飽きてるけど」
「いやいや、葉璃は俺が眼鏡掛けた顔好きなんだよな?」
「……っっ………」
「えぇ〜? セナが眼鏡掛けてもただのインテリになるだけじゃん〜」
「俺もよく分かんねぇんだけど、葉璃は好みらしい」
「そうなんだ! ……ちょっ、ねぇ、ハル君の顔ヤバくない? 耳まで真っ赤だよ」
「ほんとだ。 ハル、熱でもあんじゃないの」
「…………………!」
「どれどれ………」
「……………っっっ!」
眼鏡聖南が好きだって事まで公にバラされて、俺は俯いて恥ずかしさに耐えていた。
それなのに、アキラさんが「熱でも…」なんて言うから、心配した聖南が俺の後頭部を持っておでこをくっつけて来た。
あ、頭から湯気が出そうだ…!
「……ハル、もっと赤くなった」
「熱は無ぇな。 葉璃、大丈夫か? メシ食えそう?」
う、うん、お腹空いてるし豪華な料理食べたいから…ちょっとだけソッとしといてくれないかな…。
喉がカラカラで話も出来ない俺は、聖南が離れてからすぐに烏龍茶を一気飲みした。
「あーあ、結局今日もハル君とセナの惚気打ち上げかぁ」
「惚気打ち上げって何だよ」
「ケイタの言葉通りだ」
聖南が首を傾げてるのに、アキラさんもケイタさんも恭也までもがクスクス笑っていて、俺はとにかく話を聞かないように箸を持って料理を食べる事にする。
このままだと雲行きの怪しい会話が始まっちゃいそうだから、顔の熱を引かせて気配を消してれば、聖南のミュージカルについての感想とかに話題は移るだろう、…って。
でも、そんな俺の安易な考えはすぐに打ち消される。
「そうそう、さっき面白そうな話題をハル君から拾っちゃった」
「何だよ。 ケイタのそのニヤニヤで大体想像付くけどな」
「ふっふっふっ。 ハロウィン企画の収録の日、何かあったのー?」
「ケイタ……直球過ぎんだろ…」
「アキラも気になるだろ? ハル君は教えてくれなさそうだから、セナに聞いた方が早いし〜」
うわわ、…それこそ雲行きの怪しい話題だよ…!
やめてよ、何も言わないでよ、聖南っ。
わさびをたっぷり付けた鯛のお刺し身を口に運んだ聖南をチラと見ると、一瞬だけ目が合って逸らされる。
……あ……もしかして…。
話しちゃうの、聖南…?
「そんな気になる?」
「なるなる! なるよな、恭也!」
「な、なんで俺に…。 俺は、聞いてないフリ、してるんで」
「俺も。 セナ、話さなくていいぞ。 ハルがここに居ること忘れるなよ」
「なんでだよ〜! 気になって今日眠れないじゃーん!」
「ケイタもう黙れ」
「そう言うアキラも恭也も気になってるくせに〜〜」
なんでそんなに気になるんですか、ケイタさん…!
アキラさんも恭也も聞かなくていい雰囲気出してくれてるのに、ケイタさんだけやたらと興奮してるよ。
「葉璃、耳塞いでろ」
「え、…っ? い、いや、話しちゃダメですよ…っ?」
言わないでよ、って思いながらも、聖南に言われた通り箸を置いて両耳を塞いだ。
けどね、塞いでても意味ないって事を、数秒後の俺に教えてあげたかった。
「ドクターとナースのイメプレした」
………………………ほら、ね。
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