546 / 584

── 三月某日 ── Ⅶ 変化※

7♡  まるで終わりのない夢を見てるみたいだ。  真っ暗闇だった室内が明るみ始めても、聖南は俺を求め続けていた。  何度果てても聖南の欲は尽きない。  俺のお尻は聖南の精液でドロドロになってて、あちこちに移動させられた影響かシーツも至るところが濡れている。  ゆらゆらしていた俺のものは、出るべきものが何も無くなって元気を失い、もう許してと心の奥底で唱えても聖南の瞳には届かなかった。  逃げないって言ったのは俺だけど、一秒の休憩もなく何時間も受け止め続けなきゃなんて思わなかったんだから、泣き言くらいは許されるはずだ。 「せな、さん……っ、も、もう…だめ…俺、……っ」 「あと一回」 「ん、やっ…! むり、むりだって…っ」  疲れたとか、喉乾いたとか、そんな甘っちょろいレベルの「無理」じゃない。  何度も押さえ付けられた右肩は赤みを帯びてしまっていて、強めに噛まれた乳首はずっと敏感に育ったままで空気が触れるだけヒリヒリする。  ………もう、こんなエッチしたくない。  いっぱい甘い言葉を囁いてくれる、いつもの聖南とエッチしたい…。 「ぅ、ぅわ……っ、んんんっ…ん、…!」  必要最低限の言葉しか発さない聖南から無言で抱き起こされ、繋がった状態で足の間に置かれた。  俺の中を深くまで抉る聖南のものは、何回イってもずっと同じ強度を保っていて、くたりとなった俺のものが異常なんじゃないかって思っちゃうけど…俺は普通なんだよ。  下を向いてたら聖南に上向かされて、いっぱい唾液を送り込まれる。  時折サイドテーブルに置いてある甘いお酒で聖南は水分と欲望の補給をしてるけど、俺が許されてるのはこの聖南の唾液だけ。  序盤に喉乾いたって言ってみたら目一杯唾液を飲まされて、「逃げんのかよ」と睨まれたから怖くて言えなくなった。  苦しげに「ごめん」って謝ってきたり、その時みたいに激怒してきたり、聖南も感情のコントロールが出来なくてツラいのかもしれないけど、俺もこの状況把握に全然追い付けてないんだよ…。 「……っ…っ、……んっ…っ……」  突き上げが激しくなってきた。  聖南が自分のペースで動けるように、俺は逞しい背中に腕を回して自分でも体重を支えた。  あっ……やばい、気持ちいい……っ。  中がぐちょぐちょだから滑りがとってもよくなってて、聖南が入ってくる度に良いところが絶妙に擦られる。  軍人聖南の帽子はもうどこかにいっちゃったけど、この姿は精悍で、たとえ髪が乱れていたとしてもカッコいい。  快感に溺れていても、まだ聖南を見詰める事が出来てる俺は…どこまで聖南に夢中なんだか……。  視線を感じたらしい聖南が俺の目をジッと見てくる。  荒々しい突き上げも、視線も、吐息も、何もかも熱くて、体の芯からゾクゾクした。  俺は聖南の首元に腕を移動させて体を密着させると、聖南が腰を浮かせて一気に中を擦り上げて低く呻く。 「……………っ……」 「んんっ────!」  中がじわ〜と熱くなって、中に居る聖南のものに沿って精液がたらたらと下へ移動していくのが分かる。  何度目か分からない射精を深いところで受け止めた俺は、全身から力が抜けて聖南の胸に寄りかかった。  肩で呼吸する俺の髪を、聖南が優しく撫でてくれて安堵した。  衣装を脱がされても猫耳カチューシャは最後まで取らせてもらえなかったけど、もういいや、何でも…。  すっかり明るくなった室内で、俺達は繋がったまましばらくそうしてまどろんだ。  ようやく聖南の欲が尽きたのかもしれない。  休憩ナシの八時間?九時間?は、ほんとに死ぬかと思ったんだから……。  ジッとしてると急に眠気も襲ってきて瞳を閉じると、頭上から「あ…」と呟く聖南の声がした。 「……戻ったかも」 「………??」  いつもの聖南の声色がして見上げると、バチっと視線が合う。 「おぉぉ、戻ったっぽい!」 「…な、に…? なにが戻ったの…?」  あれ……この聖南……。  ふっと笑った聖南に痛いほど抱き締められて、その後すぐに俺の体を持ち上げて自身を引き抜くと、優しく横たえてくれた。 「いやぁ、すげぇ波だったわー。 …ドロドロじゃん」 「せなさん……っ?」 「衣装全部脱げてんのか。 猫耳だけあるな」 「……せ、聖南さんだ…! おかえりなさい!!」 「おぉっ、熱烈! よく分かんねぇけどただいま!」  いつもの聖南がやっと戻ってきてくれたのが心の底から嬉しくて、喜びのあまり抱き着いたら同じ熱量で返してくれた。  嬉しい…っ、俺の聖南だぁ……! 「ごめんな、葉璃。 体ツラかったろ」 「いえ……いや、うん。 ツラかった…。 でも俺、聖南さんになら何されても大丈夫みたいです!」 「……かわいーなぁ♡」  甘々な聖南は、ぐりぐりと頬擦りして鼻先を付けて微笑み、おでこにちゅっとキスをしてきた。  ……俺、聖南のこの優しくて甘い愛撫が無いと、愛されてる実感が持てなくなってる。  無表情で寡黙な聖南もカッコ良かったけど、あんなの聖南じゃない。  あんなの……気持ちいいエッチとは言えない。 「葉璃ネコちゃん、ちょっとだけ待っててな」  聖南の手のひらにスリスリしてたら、笑顔でするりと俺から離れて行く。 「え…? どこ行くの……?」 「ぶっ飛ばさなきゃなんねぇ奴がいるから、行ってくる♡」 「……え、…ぶっ飛ば……えぇっ?」 「すーぐ戻っから、葉璃ネコちゃんは体力温存のために寝といて♡」 「え、え、あ、あの……!」  待って聖南、さっきのエッチの時よりその笑顔の方が怖いかもしれない…!  俺に布団を掛けた聖南は、身なりを整えてほんとに部屋を出て行ってしまった。 「……ぶっ飛ばさなきゃならない人って…誰……?」  とても寝られるわけない俺が扉を見詰めて三十分後、戻ってきた聖南の手には謎の小さな瓶?が握られていて、それを何故か洗面所で叩き壊した。 「あんなもん要らねぇっつーの。 な、葉璃ネコちゃん♡」 「……………っ???」  ───笑顔が咲き乱れる大好きな聖南の拳が少しだけ赤くなってたのは、……見なかった事にしておこう。 ── 一月某日 ── ── 三月某日 ── 終

ともだちにシェアしよう!