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第16話
「もー、薫。
まだ髪濡れてるよ。
風邪ひいちゃう。」
ろくすっぽ髪も拭かずに着替えを済ませ、体育着を廊下のフックにかけているとクラスの女子が両脇を挟んだ。
「これ、タオル使って。
あ、私が拭く。」
「ありがと。」
ポンポンと毛先をタオルで挟んで乾かしてくれる女の子達と他愛ない会話をしていると図書室からあの人が出てくる所が見えた。
何やら両手いっぱいに資料らしき書籍を抱えている。
再度絡む視線。
すぐに逸らす相川を見送る様にただじっと見詰めた。
これは殆ど確信に近い。
相川は好きか嫌いかは別としても、自分を意識してくれている。
「それでね、そのバイキングに美味しいお肉料理があるの。
薫お肉好きでしょ?
…薫?
もぉー、聞いてる?」
「うん。
聞いてるよ。
お肉好きだよ。」
それが嬉しい。
マイナスでもストロークを与えられれば燃料になる。
今の古志には、相川の些細な変化まで燃料になっていた。
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